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平成27年9月14日
ビッグデータの解析を高速で!
~高速プラズマ解析システムの開発~
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 LHDでは通常、3分に1回、数秒間のプラズマを生成しています。その数秒間に、複数の計測器によりプラズマの温度や密度等を計測します。各計測器はそれぞれ、きわめて短い時間毎に計測データを記録するので、すべてのデータを合わせると膨大な量、ビッグデータになります。このビッグデータをコンピュータで解析して、プラズマ性能やプラズマ内部で起きている現象を調べています。実験を効率的に行うために、現在ではこの解析をプラズマ生成と同じように3分に1回行っていますが、短時間にビッグデータの解析を行うことは簡単ではありませんでした。今回は、この高速プラズマ解析システムの開発を紹介します。
本解析システムでは、複数の計測器から得られた実験データを入力データとして、計算プログラムをコンピュータで実行します。ところが、これらの実験データをそのままコンピュータに渡しても計算はできません。LHDのプラズマは単純な円環形状ではなく、複雑なヘリカル形状をしていることもあり、複数の計測器はそれぞれ異なる方向からプラズマを観測しています。そのため得られるデータは、それぞれの計測器で異なる座標に基づいて表されているのです。コンピュータで解析を行うためには、実験データの座標を全て、コンピュータ計算に適した座標で表すように変換しなければならないのです。また、高温プラズマの様々な物理過程に対応するよう、コンピュータ計算は複数のプログラムを連携させて行っています。それぞれの物理過程はお互いに影響し合うため、それぞれの物理過程を扱うプログラムの間にも複雑な依存関係があります。例えば、プラズマの温度分布の実験データを入力して、プラズマ中の熱の伝わり方について計算を行う場合、プラズマを閉じ込めている磁場の情報などが必要です。磁場もプラズマの状態によって変わるため、その情報を得るためには、密度・温度分布を入力して、別のプログラムで計算をしなければなりません。このような困難があったため、以前は実験データの収集とコンピュータによる解析は別々に行われ、時間もかかり、1日の間に実行可能な解析の数は限られていました。
今回開発した高速プラズマ解析システムでは、計測データの座標変換と、実験データを記録するたびに必要な複数のプログラムによるコンピュータ計算とを自動的に実行するようにしました。さらに、複数台のコンピュータを同時に使うこと、解析結果をデータベース化して、実験に応じてこのデータベースを参照することにより、解析に必要な時間の大幅な短縮に成功しました。これらにより、実験データを収集しながらコンピュータによる解析を行うことが可能になり、3分に1回のプラズマ実験毎に、解析結果を研究者に提供できるようになりました。高速プラズマ解析システムの活躍で、高温プラズマ研究の一層の加速が期待できます。

以上