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平成30年10月23日
第20サイクルのプラズマ実験を開始しました
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 本日、核融合科学研究所は、大型ヘリカル装置(LHD)の第20サイクルのプラズマ実験を開始しました。「サイクル」とは、数か月間連続してプラズマ実験を行う期間のことで、今回は、平成10年の実験開始から数えて、20回目の実験期間になります。この間、LHDは、数々の世界記録を樹立するとともに、プラズマ物理学上極めて重要な発見等、多くの成果を挙げてきました。また、前回の第19サイクルからは、重水素を用いてプラズマの更なる高性能化を目指す「重水素実験」に移行しました。
第20サイクルのプラズマ実験も重水素を用いた実験を行います。前サイクルでは、ガスを軽水素※※から重水素に切り替えた数ヶ月後に、イオン温度が核融合条件の1つである1億2,000万度を達成しました。一方、この時の電子温度は4,000万度程度にとどまっていました。今回の実験では、電子温度も上げてイオン温度に近い値を持つプラズマの生成を目指します。イオンと電子から成るプラズマは、1つの物質でありながらこのように2つの温度を持つことがしばしばあります。ところが、将来の核融合炉内のプラズマは、イオン温度と電子温度がほぼ同じ値になると言われています。核融合炉プラズマはどのような振る舞いをするのか、この問いに答えるためには、電子もできるだけ高い温度にする必要があるのです。一方、重水素実験で高いイオン温度が達成された要因の1つとして、重水素プラズマの方が、軽水素プラズマより熱が伝わりにくい(従ってプラズマが冷えにくい)性質を持っているということが前回の実験で明らかになりました。しかし、その理由は分かっていません。これは「同位体効果」と呼ばれており、核融合研究における最大の謎の1つとされています。今回の実験では、この同位体効果のメカニズムの解明や、プラズマを加熱する役割を担う高速粒子の閉じ込めに関する研究等に取り組みます。
第20サイクルの実験期間は、本日10月23日から来年2月21日までを予定しています。重水素を用いた実験(重水素実験)は、本日から来年1月25日まで実施します。その後、終盤の約1か月間は、軽水素とヘリウムガスを用いた実験を実施し、来年2月21日に終了する予定です。
研究所は、実験の安全な遂行を最優先事項として、第20サイクルにおいても機器の保守・点検、巡視等を行うとともに、万が一の事故に備えた緊急連絡・対応の訓練も実施しています。また、実験の状況を随時ホームページ上で公開する等、引き続き情報公開にも努めてまいります。今後ともご支援、ご協力の程よろしくお願い申し上げます。

以上

※  重水素: 通常の水素の2倍の質量を持つ水素。化学的性質は軽水素と同じ。
※※ 軽水素: 通常の水素