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令和2年2月7日
第21サイクルのプラズマ実験が終了しました
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 大型ヘリカル装置(LHD)の第21サイクルのプラズマ実験が、2月6日に終了しました。「サイクル」とは、数か月間連続してプラズマ実験を行う期間のことです。平成10年の実験開始以来、今回で21回目の実験期間となる第21サイクルのプラズマ実験は、10月3日に開始し、延べ52日間にわたり、7,800回を超えるプラズマの生成を行いました。この間、国内外の大学・研究機関からの多くの共同研究者とともに様々な研究を進め、昨日、実験最終日を迎えました。
第21サイクルは、第3年次の「重水素実験」に当たります。燃料ガスとして、通常の水素(軽水素)の2倍の質量を持つ重水素ガスを用いることで、高い閉じ込め性能を持つプラズマの生成を目指す実験です。LHDは第1年次の重水素実験で、ヘリカル装置としては世界で初めてイオン温度1億2,000万度を達成しました。今サイクルは、マイクロ波を用いた電子加熱の最適化を行って電子温度の上昇を図り、電子温度1億2,000万度以上、イオン温度7,000万度以上のプラズマを生成することができました。
重水素実験で高性能化したプラズマの性質を詳しく調べる実験も精力的に行いました。今回は特に、国際的な共同研究で大きな成果を挙げることができました。アメリカ・ウィスコンシン大学と共同で開発を行ってきた「高速トムソン散乱計測装置」(バックナンバー323をご参照下さい)が稼働を始めました。これは世界最高性能を誇るLHDのトムソン散乱計測(電子温度分布・電子密度分布を同時に計測する装置)の時間分解能を更に数百倍高めたもので、他の追従を全く許さない強力な計測器となりました。また、重水素実験で研究が加速した、高エネルギーイオンの挙動を日米共同で調べるために、カリフォルニア大学が設置した計測器からもデータが得られ始めました。プリンストン・プラズマ物理研究所のグループは、重水素プラズマを更に高性能化するために、真空容器壁にホウ素膜をプラズマ生成中にコーティングする装置をLHDに設置しました。これにより、プラズマ温度の低下をもたらす不純物の混入が抑えられると期待されています。1月に行われた実験では、不純物の減少を観測する等、早くも成果が出始めました。また、ポーランドの共同研究チームは、トレーサー内蔵固体ペレット(TESPEL)と呼ばれる核融合研で開発した装置(バックナンバー330をご参照下さい)を用いた不純物輸送研究に取り組みました。他にも、ドイツ、中国、韓国等からも多くの研究者が訪れ共同研究を行いました。これらの結果は、5月のプロジェクト研究成果報告会で発表する予定です。
なお、LHDでは、プラズマ実験の終了に伴い、マイナス270度に冷却していた超伝導コイルを室温に戻す運転を行っていきます。約3週間かけて少しずつ超伝導コイルの温度を上げ、昇温が終了する3月初旬からは、来年度の実験に向けた保守点検作業が始まる予定です。

以上