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令和3年2月19日
第22サイクルのプラズマ実験が終了しました
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 大型ヘリカル装置(LHD)の第22サイクルのプラズマ実験が、2月18日に終了しました。「サイクル」とは、数か月間連続してプラズマ実験を行う期間のことです。平成10年の実験開始以来、今回で22回目の実験期間となる第22サイクルのプラズマ実験は、10月15日に開始し、延べ60日間にわたり、8,800回を超えるプラズマの生成を行いました。この間、国内外の大学・研究機関からの多くの共同研究者とともに様々な研究を進め、昨日、実験最終日を迎えました。
今年度は新型コロナウイルス感染症拡大により、研究所の研究・教育活動も影響を受けました。実験準備も緊急事態宣言下で行われたため、作業に遅延も生じましたが、何とか予定通りの実験日を確保することができました。実験は、多くの共同研究者が来所できない中、一部は「リモート」で実施されました。リモート実験は、海外の研究者にとっては手軽に参加することが可能となるため、かえって機会の増加につながり、今後も新しい共同研究スタイルとして定着しそうです。
このような状況の中、今サイクルの実験でも多くの成果が得られました。第19サイクルの平成29年に開始した、重水素ガスを用いた実験(重水素実験)も、今回で4回目となります。重水素とは通常の水素(軽水素)の2倍の質量を持つ同位体で、重水素は軽水素より高い性能のプラズマが得られることが期待されています。性能の指標であるプラズマの温度は年々上昇し、今サイクルの実験でも、昨年度までに達成した温度領域を更に拡張することができました。現在詳細な解析を行っており、正確な値は「プロジェクト成果報告会」で発表する予定です。
このように、重水素実験で高性能化したプラズマを用いて、将来の核融合炉のプラズマを模擬した実験を行うことが可能となったことで、LHDの研究は新たな段階に入りました。核融合炉では、核融合反応で生じる高エネルギー粒子によってプラズマが加熱されます。このようなプラズマの挙動を理解することは、核融合発電を実現するために極めて重要です。LHDでは、重水素実験で得られた高性能プラズマ中に、(核融合反応による発生を模擬した)高エネルギー粒子を入射することが可能です。今サイクルの実験では、カリフォルニア大学と共同で、高エネルギー粒子の分布や密度の精密な計測を行いました。得られたデータをシミュレーションと組み合わせることで、プラズマ中の高エネルギー粒子がどのような過程を経てプラズマを加熱するのかが解き明かされることが期待されています。
この高エネルギー粒子は、プラズマを加熱することにより自身のエネルギーを失って冷えた後、核融合炉内の「灰」となるため、最終的には炉の外に排出されなければなりません。そのため、ヘリカル型装置では初となる、灰粒子(実際の反応ではヘリウム)が、プラズマ中でどのように移動し、プラズマの外に出てくるか調べる実験が行われました。
これらの成果の詳細は、3月に開催される「LHDワークショップ」(リモートによる国際開催)及び来年度早々に開催されるプロジェクト研究成果報告会で発表する予定です。
今後LHDはマイナス270度に冷却していた超伝導コイルを室温に戻し、3月下旬からは、来年度の実験に向けた保守点検作業、機器のアップグレード等の作業を開始する予定です。

以上