第31回国際土岐コンファレンス開催のご報告

 第31回プラズマ・核融合研究に関する国際土岐コンファレンス(The 31st International Toki Conference on Plasma and Fusion Research –Expanding academic world emerging from fusion science–; ITC31)を2022年11月8日から11日までオンラインで開催しました。国際土岐コンファレンスは、核融合科学とプラズマ科学の未来を考える会議であり、第31回の本会議は、「核融合科学から生まれる学術世界の広がり」を副題として、核融合・プラズマ科学の普遍化に向けた国際的・学際的な議論の場として開催しました。

 本会議は、核融合科学研究所における研究活動の新たな実施主体となる11のユニットの研究計画を紹介する特別セッションを中心に構成しました。核融合科学の学際的な発展を目指す核融合科学研究所の方針を反映して、核融合科学分野にとどまらず、広い分野から研究者を招いて、2件の基調講演と56件の招待講演を行いました。さらに、一般講演のためにオンラインで開催したポスターセッションでは194件の研究発表が行われ、全体の研究発表数は252件でした。世界中から多くの研究者に参加いただき、海外からの参加者(19ヶ国70名)を含む425名の参加登録がありました。

開会挨拶の様子

 会議は吉田善章所長の開会挨拶で幕を開けました。古屋圭司衆議院議員(ご代読)、渡辺猛之参議院議員(ご代読)、大野泰正参議院議員(ご代読)、加藤淳司土岐市長、さらに、稲田剛毅文部科学省研究開発局研究開発戦略官からご祝辞をいただきました。地元の方々や関係者の長年にわたる研究所への暖かいご支援に感謝申し上げます。

 会議冒頭では、吉田善章所長から「Future of fusion science – perspective of general physics」と題して核融合科学の未来に関する基調講演があり、一般物理学に対するプラズマ物理学の貢献が議論されました。続いて、プリンストン・プラズマ物理研究所のAmitava Bhattacharjee教授による基調講演では、「Current sheets and the plasmoid instability: mediators of fast magnetic reconnection and turbulence」と題して、プラズモイド不安定性に関するシミュレーション・理論・実験研究の進展により、プラズマ物理学の長年の重要課題である磁気リコネクションの謎が解明されたことが紹介されました。

ポスターセッションの様子
学生優秀発表授賞式の様子

 会議のプログラムは、高部英明国際プログラム委員会委員長のリーダーシップの下、11のユニット(1)メタ階層ダイナミクス、(2)構造形成・持続性、(3)位相空間乱流、(4)プラズマ量子プロセス、(5)プラズマ・複相間輸送、(6) 可知化センシング、(7) プラズマ装置学、(8) 複合大域シミュレーション、(9) 超高流束協奏材料、(10) 超伝導・低温工学、(11) 核融合安全性科学 からの委員で構成された国際プログラム委員会によって編成されました。11の特別セッションでは、それぞれのユニットが研究計画を発表するとともに、ユニットの研究活動が学際的に展開される多彩な学術分野からの招待講演が行われました。また、本会議は「国際純粋および応用物理連合(IUPAP)創立100周年」及び「持続可能な発展のための国際基礎科学年(IYBSSD)」の協賛イベントとして登録され、IUPAP特別セッションを開催しました。会議のまとめとなるサマリーセッションでは、東京大学の山田弘司教授と名古屋大学宇宙地球環境研究所の草野完也所長に招待講演を行っていただきました。全ての講演の中から、投稿・査読を経た論文が、プラズマ・核融合学会の英文学術誌Plasma and Fusion Researchに掲載されます。全てのセッションにおいて活発な議論が行われ、本会議は核融合科学の学際的な発展に向けた有意義な会議となりました。参加者の皆様及びプログラムを作成された高部英明委員長と国際プログラム委員会に御礼申し上げます。

学生優秀発表賞 最優秀賞を受賞したJoseph John Simonsさん

 土岐コンファレンスでは、学生の研究活動の奨励を目的として、特に優れた発表を行った学生を対象にBest Student Presentation Award(学生優秀発表賞)を授与しています。今回は75件の学生発表の中から、最優秀賞1名 Joseph John Simons (総合研究大学院大学)、優秀賞7名 稲垣秦一郎 (京都工芸繊維大学)、梅﨑大介 (九州大学)、小谷翼(京都大学)、Allen Vincent Catapang (同志社大学)、中山智成 (総合研究大学院大学)、那須達丈 (総合研究大学院大学)、 藤村哲也(東京大学)にそれぞれ授与しました。学生参加者のみなさんの今後の益々の活躍を期待します。

 最後になりますが、本会議は岐阜県、土岐市、一般社団法人プラズマ・核融合学会、核融合科学研究会のご後援をいただきました。ここに御礼申し上げます。

       

(藤堂泰 核融合理論シミュレーション研究系 研究主幹・教授/ITC31実行委員会)