総研大アジアンスクール(ASPNF2023)

小川国大


集合写真

 総合研究大学院大学(総研大)・先端学術院・核融合科学コースは、2023年5月29日(月)から6月2日(金)まで、タイのシーナカリンウィロート大学で総研大アジアンスクールを開催しました。本事業はこれまで、総研大アジア冬の学校として実施しておりましたが、本年度は初夏に開催されたことから、総研大アジアンスクールと改称して行いました。本スクールは、近年、経済発展が目覚ましい東南アジアの学生へ核融合研究を広く周知し、総研大・核融合科学コースへの入学を勧誘することを目的としており、2017年度からはタイ国家原子力技術研究所TINT: Thailand Institute of Nuclear Technology (Public Organization) が主催しているASEAN School on Plasma and Nuclear Fusion (ASPNF2023) との共催の形で開催しています。これは、核融合エネルギーに興味を持つ東南アジア諸国の優秀な学生が多数参加することを可能とするためです。本年度のスクールは、タイのシーナカリンウィロート大学で行いました。今回は、タイ、インドネシア、インド、ネパール、ベトナム、及び日本から合計92名の参加がありました。

核融合プラズマにおける高エネルギー粒子と波動との相互作用の講義

 核融合科学研究所からは、磯部光孝教授、後藤基志准教授と筆者の3名が講師として、また、総研大生1名も参加しました。総研大・核融合科学コースとして、30分の基調講演、105分の講義、及び30分の総研大・核融合科学コースの紹介を行いました。基調講演では、後藤准教授が当研究所で行われている最新の研究成果について報告し、講義では、筆者が、核融合プラズマにおける高エネルギー粒子と波動との相互作用について講義しました。総研大・核融合科学コースの紹介においては、磯部教授が核融合コースと研究内容について述べた後、総研大生が学生生活の紹介を行いました。その他、核融合プラズマ研究で必須である、荷電粒子軌道、粒子輸送、電磁流体力学、乱流などについての基礎から、タイ、ヨーロッパ、中国における核融合研究開発の現状についての講義、さらに建設中のITERの現状と将来についての講演が行われました。

   

 また、本スクールの初日においては、TINTにおいて、間もなくプラズマ実験が開始される、東南アジア初の磁場閉じ込めプラズマ実験装置Thailand Tokamak-1の見学がありました。学生は、実際の装置を目の当たりにして、刺激を受けている様子でした。別日には、学生が6チームに分かれ、チェコ共和国・プラハ工科大学に設置されているGOLEMトカマク装置を活用した実験演習を行いました。最終日には、チーム毎にGOLEM実験結果に関する口頭発表を行い、講師及び他の学生との質疑応答を行いました。

 参加した学生は大変熱心で、休憩時間においても講師に質問を行うなど、強い意欲を感じました。総研大への進学についても、多数の質問を受けました。今後、本スクールの参加をきっかけとして、学生が総研大へ進学してくれることを願っております。総研大アジアンスクールを開催するにあたり、TINTとシーナカリンウィロート大学の皆様には、大変親身になってご協力頂きました。深く感謝いたします。

Thailand Tokamak-1の見学

(構造形成・持続性ユニット 准教授)