LHDにおける第25サイクルのプラズマ実験

坂本隆一


大規模学術フロンティア促進事業から学術研究基盤事業へ

 LHDは、環状プラズマの総合的理解を目的として、1998年3月のファーストプラズマ以降、四半世紀にわたって世界最大の超伝導プラズマ閉じ込め装置として実験研究を実施し、多くの成果を挙げてきました。2013年度からは文部科学省の大規模学術フロンティア促進事業の支援を受けて10年間のプロジェクトを推進し、重水素実験を中心とする研究に取り組んできました。2022年度をもって上記のプロジェクトは終了しましたが、高精細計測装置や多彩な加熱装置など、これまでのLHDプロジェクトの資産を学術研究基盤として活用するため、2023年度から3年間は、文部科学省の学術研究基盤事業として支援を受けて運用しています。

図1. LHDに関するパラメータ。これまでのLHDプロジェクトの資産を学術研究基盤として活用する。

 学術研究基盤LHDでは、超高温プラズマを安定に生成できるLHDにおいて、多様な高精細計測装置を用いてプラズマの内部構造を計ることによって、核融合に限らず宇宙・天体プラズマにも共通する様々な複雑現象の原理に迫る国際共同研究を実施します。学術研究基盤LHDはオープンデータを旨とし、多くの他分野の研究者を巻き込んで、核融合科学の異分野融合を推進するための研究基盤を整備します。また、2017年からLHDで実施してきた重水素を用いたプラズマ実験は2022年度で終了しており、学術研究基盤LHDでは通常の水素(軽水素)等を用いた実験を行います。したがって、今後は新たな中性子やトリチウムの発生は無くなります。

実験スケジュール

 学術研究基盤LHDとしての最初の実験サイクルとなる今回は、LHDとしては通算25回目の実験サイクルになり、プラズマ実験は2024年3月13日から6月20日まで実施します。2月1日から真空容器の真空排気を開始し、真空容器の加熱やグロー放電によって、プラズマ真空容器の内壁の状態を調整する処理を行い、同時に、超伝導コイルの冷却を開始しました。おおよそ1カ月間かけて約800トンの超伝導コイルシステムをマイナス269 ℃まで冷却し、予定どおり、3月13日からプラズマ実験を開始しています。

図2. 2024年に実施する第25サイクルの予定。プラズマ実験は、2024年3月13日から6月20日まで実施します。

 今年度のLHDを用いた共同研究には、国内の共同研究者258人、海外の共同研究者120人の共同研究者が参画しています。第25サイクルのプラズマ実験に向けて、昨年の11月に実験提案を募集し、国内共同研究者から118件、海外からは47件、計165件の実験提案がありました。12月には実験提案を紹介してもらうLHD Research Forumをオンラインで開催しました。165件の実験提案それぞれが、様々な条件における実験を計画しており、全ての実験提案を56日間の限られた実験期間に配分することはとても難しいパズルですが、より多くの研究者が成果を出せるように工夫して実験スケジュールを策定しました。実験スケジュールや毎日の実験結果の速報は、LHD実験Webページにて公開しています。

         

LHDが進めるオープンサイエンス

 LHDではオープンサイエンスを進めています。核融合研究分野では世界で唯一、実験データのリアルタイム公開をしています。オンライン会議システムも併用して、国内外問わず多くの共同研究者とデータを共有しながら実験を進める体制を整えており、世界中の誰でも、インターネットを通してLHDデータリポジトリ(DOI:10.57451/lhd.analyzed-data)にアクセスすることができます。LHDのデータを用いた共同研究に興味をお持ちの研究者は、LHD部門事務室(電子メール:cs_lhdarp@nifs.ac.jp)へご連絡ください。

 また、LHDでは研究成果を広く紹介しています。学術論文誌に掲載された研究成果の要点をわかりやすく説明したLHDの研究成果のWebページを公開していますので、ぜひ、ご一読ください。もし、内容や専門用語に関して質問やコメントがあれば、LHD部門事務室(電子メール:cs_lhdarp@nifs.ac.jp)へご連絡ください。ご質問にお答えするとともに、今後のページ作成の参考にさせていただきます。

(研究部長/プラットフォーム企画室長)