会議報告:26th International Conference on Spectral Line Shapes

後藤基志


 2024年6月2日から6月7日までの日程で、滋賀県大津市の滋賀県立武道館において、26th International Conference on Spectral Line Shapes (ICSLS2024)を、プラズマ・核融合学会との共催で実施しました。12か国から52名が参加し、招待講演、一般口頭講演およびポスター発表による研究報告が行われました。
 本国際会議は1973年に始まり、隔年で開催されています。これまでの会議はこれまですべて北米とヨーロッパの都市で開催され、参加者もほとんど欧米の研究者に限られていました。しかし、日本からの参加者を増やしたいという要請を受け、私は2010年に開催された第20回の会議から国際プログラム委員を務め、これまで毎回2名程度日本からの招待講演を推薦してきました。このような背景から、日本での開催が数年前から打診され、今回、北米およびヨーロッパ以外での初めての開催が実現しました。
 会議がカバーする学問分野は多岐にわたりますが、「原子あるいは分子の励起エネルギー準位間遷移に伴い放出あるいは吸収される光、いわゆるスペクトル線、に関する研究」が本会議の共通テーマです。スペクトル線の強度、広がり、分裂などの特性は、それに関わる原子もしくは分子が感じる磁場、電場のような「場」に関する多くの情報を持っています。その「場」を記述するパラメータもしくは条件と、スペクトル線特性との関係を明らかにするため、世界各地でさまざまな実験的および理論的研究が行われており、核融合プラズマ研究においても重要なテーマの一つとなっています。

写真1.講演会場の様子。窓からの採光が適切で、居心地の良い部屋でした。

 プログラム構成に関しては、国際プログラム委員の中から選出される会議主催者の裁量に一任されるため、会議主催者の専門分野が比較的大きく取り上げられる傾向があります。今回の会議でも、今回の主催者である私が専門とする分光プラズマ診断を一つの大きなトピックとして取り上げました。この分野における日本のアクティビティの高さを欧米の研究者に印象付けるとともに、日本の若手研究者および学生にとっては、欧米の最新の研究成果に触れる良い機会を提供できたと思っています。
 個人的に特に印象に残った別のトピックとして、周波数コムを用いたスペクトル線波長の超精密測定が挙げられます。周波数コムは光格子時計や太陽系外惑星探索など、物理学全般においても注目度の高い研究の核となる技術であり、今後プラズマ計測への応用も期待されます。
 会期中は晴天に恵まれ、エクスカーションで訪れた石山寺と甲賀忍者村も参加者には大変好評でした。次回は2026年にスウェーデンのルレオ工科大学で開催される予定です。

写真2.会場は琵琶湖畔にあり、ランチタイムは水際にて。

(メタ階層ダイナミクスユニット 教授)