第13回自然科学研究機構若手研究者賞を受賞

 本研究所研究部可知化センシングユニットの太田雅人助教による「相対論的プラズマに関する実験的研究」の研究成果および京都大学の森下侑哉助教(本研究所の共同利用研究者)による「データ同化に基づく核融合プラズマの適応予測制御システムの開発」の研究成果に対して、第13回自然科学研究機構若手研究者賞が授与されました。
 この賞は、新しい自然科学分野の創成に熱心に取り組み、成果をあげた優秀な若手研究者を対象として、自然科学研究機構が授与しているものです。

 太田助教による「相対論的プラズマに関する実験的研究」の研究成果は、主に、加速器で生成された高エネルギー電子ビームの周りに形成される相対論的クーロン電場を、超高速計測手法によって可視化したという内容です。この相対論的クーロン電場は、A. Einsteinが相対性理論に関して初めて発表した論文のタイトル「運動物体の電気力学について」が指し示す現象で、世紀を超えて、その直接的な検証に成功しました。
 また、森下助教による「データ同化に基づく核融合プラズマの適応予測制御システムの開発」の研究成果は、データ同化と呼ばれる数理的技術を応用した予測制御システムを開発し、その制御能力を実証したという内容です。磁場閉じ込め方式による核融合発電を実現するためには、長時間にわたり一億度を超える超高温プラズマを制御することが必要となります。しかしながら、核融合プラズマの複雑な挙動を予測して制御することは、正確な予測モデル(デジタルツイン)を作ることが難しいことなどから挑戦的な課題となっています。森下助教らは、この課題に対して今回のシステムを開発しました。本システムは計測情報を用いてモデルを現実のプラズマに近づけることができるため、モデルの精度が高い状態でプラズマの挙動を予測し、制御することができます。この技術は、将来の核融合炉制御の基盤となることが期待されます。

 なお、この賞については、7月24日(水)に会場およびオンラインによるハイブリッド開催で「アインシュタイン“最初”の宿題」「核融合プラズマのデジタルツイン制御への挑戦」というタイトルで受賞記念講演が行われました。

講演動画はこちらからご覧いただけます。
太田助教 https://youtu.be/IXD2-Y7DAMc?feature=shared
森下助教 https://youtu.be/itcpnsSTnhQ?feature=shared

左から川合機構長、太田助教、森下助教、藤堂副所長