総研大・核融合科学コース「2025年度 夏の体験入学」

時谷政行

 2025年8月25日(月)から29日(金)までの日程で、核融合科学研究所において、国立大学法人 総合研究大学院大学(以下、総研大) 先端学術院 核融合科学コース(以下、本コース)「2025年度 夏の体験入学」が開催されました。「夏の体験入学」は、核融合科学分野で博士学位取得のための進学を検討されている、大学1年生から4年生、高等専門学校4、5年生と専攻科生、及び大学院修士課程1年生を対象に、本コースでの教育・研究を合宿形式で体験していただくことを主な目的として2004年から毎年開催しています。
 22回目となる今年は、31名の学生(内訳:大学生26名、高専生4名、大学院生1名)が参加しました(写真1)。参加学生は核融合科学研究所内にある宿泊施設「ヘリコンクラブ」に宿泊しながら最先端の核融合研究を体験しました。

写真1.「2025年度 夏の体験入学」参加学生と教員との集合写真

最先端の研究を体験する5日間のはじまり

 核融合科学研究所は、本コースのメインキャンパスであり、核融合研究に関する最先端の実験装置やコンピューターが整備されています。これらの装置・施設等を用いて日々行われている核融合科学を構成する研究分野は、プラズマ物理学、原子物理学、電気工学、低温・超伝導工学、材料工学、真空工学、シミュレーション科学など多岐にわたっており、本コースには各研究分野を専門とする教員が在籍しています。今回の体験入学では、表1の通り「プラズマ実験・核融合工学系」から7課題、「解析・理論・シミュレーション系」から3課題の計10課題が実施されました。各参加学生からは参加にあたってのコメントを事前にいただいていますが、どのコメントも核融合研究への強い関心と学びの意欲が伝わるものでした。

〈表1〉夏の体験入学実施課題

 体験入学の1日目は会議室にて榊原悟コース長からの歓迎の挨拶に加えて、表1の研究課題の概要について、各課題担当教員から説明がありました。そして、全体顔合わせを兼ねて各参加学生から自己紹介が行われました。その後、参加学生は大型ヘリカル装置(LHD)および、シミュレーションやバーチャルリアリティに関する施設見学を行いました。施設見学の様子の写真にあるように、参加学生は大規模かつ高度な実験装置群を目の当たりにし、高揚感が抑えられない様子でした(写真2)。

写真2.施設見学の様子

 1日目の夕食は核融合科学研究所内にある食堂「土岐っ子」にて、参加学生、総研大教員、核融合科学研究所に在籍する総研大生を交えた懇親会が開催されました。参加学生はリラックスした雰囲気の中で交流を深めることができ、2日目からの研究体験に期待を膨らませている様子でした。

実習/講義、学生や教員との議論を通じて得る総研大での研究体験

 2日目の午前に、榊原悟コース長による特別講義が行われ(写真3)、参加学生は、核融合科学の基礎から核融合プラズマ研究の歴史、最先端の研究課題について学びました。2日目の午後から、いよいよ各課題に分かれた実習がスタートしました(写真4)。実習は3日目、4日目と続きますが、参加学生は毎日朝礼で一旦会議室に集合し、実習開始前に前日の実習内容を互いに報告し合いました。また、実習の合間には参加学生同士や教員との交流の場(イベント)も複数設けられました。例年人気の高いイベントの一つである、研究者への道(キャリアパス)をテーマとした座談会「キャリアビルディング」を今年も実習2日目の課題終了後に開催しました(写真5)。今年も先輩研究者として総研大の若手教員をパネリストに迎え、研究者になるまでの道のりを、実体験を基にわかりやすく話してくれました。参加学生からは数多くの質問があり、パネリストは個々の質問に熱心に答えていました。参加学生にとっては、直接研究者と話をすることで、将来の進路を考える上で貴重な機会になったのではないかと思います。

写真3.榊原悟コース長による特別講義の様子
写真4.各課題に分かれた実習の様子
写真5.研究者への道(キャリアパス)をテーマとした座談会「キャリアビルディング」の様子

最終日には実習で取り組んだ研究成果を発表

 最終日の5日目は、前日までに実習で取り組んだ研究成果の発表会が開催されました(写真6)。会議室には参加学生、課題担当教員、総研大関係者が集まり、発表時間10分・質疑応答3分の口頭発表が行われました。短い課題実習期間にもかかわらず、各参加学生は専門的な説明を交えたわかりやすい発表を行っていました。質疑応答では鋭い質問が多くありましたが、少し難しい質問に対しても発表者が真摯に答える姿勢が伺え、互いの実習内容を深く理解し合う姿勢が印象的でした。研究者になると学会発表等で発表や質疑応答を行う機会が増えるため、最終日の発表会は良い経験になったのではないかと思います。発表会の後、榊原悟コース長から体験入学全体の講評とコースへの入学案内等があり、最後に閉校式をもって体験入学を締めくくりました。

写真6.研究成果発表会の様子

 各参加学生からその後に提出していただいたアンケートと体験談には、研究を進めるにおいての苦労や面白さを、最先端の核融合研究を通じて体験できたことへの充実感が伝わってきました。合宿形式で学生同士や研究者と交流できたことも、今後の進路を考える上で貴重な体験になったようです。夏の体験入学は今後も開催していく予定です。本イベントを通じて、将来の核融合研究を担う研究者が育ってくれることを期待しています。これまでの夏の体験入学の概要や参加学生の体験談などを総研大核融合科学コースのホームページ(https://soken.nifs.ac.jp/archives/open/opencampus)で公開していますので、ぜひご覧ください。

 最後に、夏の体験入学は、総研大の「新入生確保のための広報的事業」および「NPO法人 核融合科学研究会」からのご支援により実施することができました。ここに厚く御礼申し上げます。

(プラズマ・複相間輸送ユニット 教授/
総合研究大学院大学 先端学術院 核融合科学コース 併任)