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プレスリリース
核融合炉実現を目指す革新的エネルギー循環工学研究設備 の完成披露見学会

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核融合炉の実現を目指す工学研究の装置群を整備共同利用、共同研究への供用を開始

 自然科学研究機構 核融合科学研究所 (岐阜県土岐市 所長・竹入康彦)では、核融合炉の実現を目指す理学・工学研究を進めています。この度、その工学研究の基幹設備となる「核融合炉実現を目指す革新的エネルギー循環工学研究設備」を整備し、その運用を開始しました。

 本研究設備は、超伝導技術、高温液体技術、核融合炉材料、耐熱機器など核融合炉実現に必要とされる工学研究を支援する世界最大級の実験装置を多数有しています。

 本装置群を、革新的エネルギー循環工学研究拠点として国内外の研究機関との幅広い共同利用・共同研究に供することにより、核融合炉の早期実現を目指す工学研究を一層加速させるとともに、エネルギー循環工学という新しい分野の創成を目指し、若手研究者の育成にも貢献したいと考えています。

核融合発電システム研究用の熱・物質流動ループ装置が完成

将来のヘリカル炉における先進高効率発電システム実現をめざし、
総合的な技術・機能基礎試験を開始

◇核融合科学研究所では、核融合エネルギーを500℃以上の高温で安全に取り出し、高効率発電を実現させるために、先進発電システムの開発研究に取り組んでいます。
・今回、核融合炉で想定される熱や磁場の条件を模擬し、必要な技術や機能を総合的に試験、実証するための発電システム開発研究用の熱・物質流動ループ装置が完成しました。

核融合発電システム研究用の熱・物質流動ループ装置(装置名:オロシ2)

 核融合炉で発生する中性子を吸収してその熱を回収すると同時に、核融合燃料を生産するブランケットの総合的な技術開発研究および特性試験を行うための装置です。高効率先進ブランケットの熱輸送媒体候補である溶融塩(FLiNaK)と液体金属(LiPb)を300~600℃で高速循環流動させる、世界唯一のツインループ装置です。超伝導コイルが発生する流動直交3テスラの磁場は世界最強であり、その影響を調べることもできます。発電の模擬試験を最終目標としています。

本研究の社会的意義

  • 同じ熱量の核融合エネルギーを発電に利用する際には、より高温で熱を核融合炉から取り出す方が効率の良い発電が可能となります。そのため、水を用いるシステムでは困難な500℃以上の高温で、安全性に優れた高効率発電システムを実現させることは、将来の核融合発電炉の発電コストの低減、即ち、電力料金の抑制に寄与し、経済的観点からも核融合発電の魅力を高めます。
  • 液体溶融塩や液体金属のような500℃以上の高温融体を用いた核融合発電システムの研究成果は、金属精錬や化学工学、燃料電池、太陽熱発電の蓄熱レシーバー等の同じく高温融体を用いる技術への波及効果が期待でき、高効率先進エネルギー社会の構築へ貢献します。最近は、溶融塩を用いた風力発電システムも検討されています。

補足資料1

図1. 核融合炉用の先進発電システムの仕組み。化学的安定性に優れ、高温での安全な取り扱いが可能なフリナック(FLiNaK)等の液体溶融塩やリチウム鉛(LiPb)等の液体金属を熱輸送媒体として使用し、炉心プラズマに面する”ブランケット”といわれる金属製容器から500℃以上で熱を核融合炉の外に取り出して高効率の発電を実現します。また、熱の取り出しと同時にブランケットで生産される水素燃料の回収も行います。

図2. 試験装置(装置名:オロシ2)の構成図。ポンプにより高温液体を金属配管ループ内に高速循環させ、加熱器や冷却器により温度を制御します。ループには、発電システムに必要な機能を試験するモジュールを取り付け、総合的な試験を行います。

実規模・実環境核融合炉構造材料の試作及び評価装置の充実

  1. 高温静水圧焼結接合試験システム (Hot Isostatic Pressing; HIP)
    アルゴン(Ar)や窒素(N2)等の不活性ガスで高い圧力を均一に等方的に作用させて、構造材料などを成型・焼結・接合処理します。最大2000℃、200MPa(深海2万メ-トルの圧力に相当)が可能です。核融合炉に必要な耐熱材料や異種材料の接合技術を開発します。
  2. 超高真空クリ-プ試験装置(大型・中型)
    長期間(1万時間以上)にわたって材料に引張力を加え、その変形の様子から材料のクリープ(時間とともに変形が進む現象)強度と呼ばれる特性を調べるための装置です。 超高真空中での試験が可能で、高温における材料の酸化を抑制し,実環境での評価が可能です。

本装置群の社会的意義

  • 高温・高圧下での熱処理を用いるような高密度焼結や接合(拡散接合等)の技術が蓄積されて、他分野への応用への大きな波及効果が期待できます。
  • 長時間のクリープ試験でのデ-タは、構造材料の寿命を推定するためのものであり、核融合材料だけでなく、従来の構造材料にも適用することができます。

補足資料1

1. HIP処理試料作製装置群の形成

粉末等の密封系試料に対応できるように、大型グロ-ブボックスと高純度金属カプセル脱気封入装置を整備しました。
・ 両装置ともに、Arガス精製機構が付属されており、作業領域内の酸素濃度を1ppm以下に抑制できます。
・試料準備・カプセル封入・HIP処理の一連の作業を迅速に実施できます。

2. HIP装置の導入による核融合炉構造材料の開発促進

超高温耐熱機器開発のための試験装置が完成

本研究の社会的意義

  • 超高温耐熱機器は、宇宙、航空、新エネルギー等の新領域開拓にも貢献できます。
  • イオンビーム解析装置は、薄膜の組成分析、結晶分析にも利用できます。

補足資料1

  • 実機サイズの性能評価により、世界最高水準の信頼性を有する耐熱機器の開発に貢献できます。
  • 高速のイオンビームを物質に衝突させることで、荷電粒子励起X線や弾性反跳粒子の発生、ラザフォード後方散乱等、さまざまな物理現象が発生します。それを利用して、表面分析を行います。

高分解微細構造解析装置群が完成

本装置群の社会的意義

  • 核融合材料における微細組織・微細構造を高分解能にて観察・解析を行うことが可能になり、これからの核融合材料開発に大きく貢献します。
  • 当該分野の材料だけでなく、材料科学全般のイノベ-ションに寄与することが可能であり、高機能材料や極限材料等の新材料の創生が加速されます。

補足資料1

1. 電子顕微鏡と観察領域 (ミリ領域からナノ領域へ)

2. 顕微鏡の性能比較

核融合炉用 超伝導マグネット開発のための温度可変低温設備、および、大口径高磁場導体試験設備が完成

将来のヘリカル型核融合炉の巨大超伝導マグネットシステム構築のため、100 kA級大型超伝導導体の開発研究を推進

◇将来のヘリカル型核融合炉の巨大な超伝導マグネットシステムに用いるための 100 k<pclA (10万アンペア)級大型超伝導導体の開発研究を行っています。
・今回、核融合炉で想定される磁場や温度の条件を模擬した実環境・実機能試験を遂行するため、温度可変低温設備と大口径高磁場導体試験設備を完成させました。

温度可変低温設備は、絶対温度 4~50ケルビン (-269~-223℃)で温度制御された低温ヘリウムを安定に供給します。これを受ける大口径高磁場導体試験設備は、最大磁場13テスラを70cmの大口径に発生させる世界最大級の大型超伝導試験装置です。これらを用いて、核融合炉で想定される 100kA級の低温(4ケルビンで使用)、および、高温超伝導導体(20~50ケルビンで使用)の実環境・実機能試験を行います。特に、強大な電磁力が印加された場合の超伝導特性の変化に注目しています。

本研究の社会的意義

  • 今回完成した温度可変低温設備、および、大口径高磁場導体試験設備を用い、核融合原型炉用超伝導マグネットを開発するための国際拠点を形成します。
  • 国際熱核融合実験炉 ITER、および、幅広いアプローチ BA にも、それぞれ、トロイダル磁場コイル用導体の接続部試験や JT-60SA 装置実機中心ソレノイドコイルの試験などを通じて貢献します。
  • 大口径高磁場導体試験設備の温度制御された環境は、電力応用や医療応用に使われる各種の高温超伝導導体の開発にも有効です。
  • 高磁場を利用した機能性材料の開発等を行うことで、様々な波及効果も期待できます。

補足資料1

図1. ヘリカル型核融合炉のヘリカルコイル、および、これに適用すべく開発を進めている 3 種類の大型超伝導導体の例。1. 超臨界ヘリウム冷却方式・ケーブルインコンジット低温導体(ITER 導体)、2. 間接冷却方式・低温導体、3. ガスヘリウム冷却方式・高温超伝導導体。それぞれ、磁場12テスラにおいて、電流 100 kA が必要。1.と2.は絶対温度 4~10ケルビンで試験、3.は20~50ケルビンで試験。

図2. 超伝導マグネット研究棟の設備全景。温度可変低温設備の循環圧縮機で圧縮されたガスヘリウムがコールドボックスで膨張されることによって冷やされ、絶対温度 4~50 ケルビン(-269 ~ -223℃)で正確に温度制御された低温ヘリウム(=液体ヘリウム、超臨界ヘリウム、ガスヘリウム)として大口径高磁場導体試験設備に送られます。 温度可変電流リードは、絶対温度 50 ケルビンにおいて電流 50 kA を流すことが可能です。

本件に関するお問い合わせ先

大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 核融合科学研究所
管理部 総務企画課 対外協力係
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