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平成22年5月17日

平成21年度大型ヘリカル装置(LHD)実験成果報告会

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 

 

 

 さわやかな初夏の季節を迎え、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回は、平成21年度大型ヘリカル装置(LHD)実験成果報告会のご報告をさせていただきます。
 通算で13回目となる平成21年度の大型ヘリカル装置の運転では、プラズマ実験を昨年10月1日に開始し、同年12月24日に終了しました。将来の核融合炉実現に向けた物理・工学に関する幅広い学術研究を進めるために、実験期間中に約4,000回のプラズマ放電を行いました。得られた研究成果を研究所員のみならず全国の大学や研究機関の研究者と議論するために、4月12日〜13日に「平成21年度大型ヘリカル装置(LHD)実験成果報告会」を開催しました。LHDの実験・研究には全国から多くの研究者が参加しており、発表者の半数はこうした共同研究者でした。成果報告会の参加者は100名以上にのぼり、研究成果について熱心な議論が行われました。
 昨年度の実験における大きな成果は、1億7,000万度の電子温度を達成したことです。これは、筑波大学との共同研究により強力なマイクロ波発振管を開発し、それを用いてプラズマ中の電子を集中的に加熱することにより得られましたが、それだけではありません。プラズマの閉じ込め性能は、プラズマを閉じ込めるための磁場の籠(かご)の形に大きく依存しますが、1億7,000万度の電子温度は、これまでの実験において見出された「良い」磁場の籠の形状を用いることで達成されました。まさに、工学と物理の両方の研究成果により達成されたわけです。電子温度を測る計測器も改良を加え、精度の高い計測を実現することができました。
 もう一つの大きな成果は、不純物の抑制に関するものです。将来の核融合プラズマでは水素を燃料として用いますが、炭素や鉄などが「不純物」としてプラズマに混入すると、燃料純度が低下するだけではなく、プラズマの温度を下げてしまいます。LHDではプラズマの温度を高くするとこの不純物が大きく減少する現象が一昨年度の実験において発見されましたが、昨年度の実験では、重さの異なる様々な不純物に対してその傾向を調べました。その結果、重い不純物ほどプラズマの中心から外側へ吐き出されることを突き止めました。このことは将来の核融合プラズマにとって極めて好ましい性質です。さらに解明を進めることにより、LHDの性能をさらに高めることが期待されます。
 その他にも、1cc当たり300兆個の高密度プラズマを3秒間維持することに成功しました。この高密度プラズマはプラズマの周辺部にできた密度の「壁」により支えられていますが、これまでの実験ではその「壁」を長時間維持する事が困難でした。水素ガスを氷にしてプラズマに連続的に打ち込む燃料供給装置(水素ペレット連続入射装置)に改良を加え、高密度の状態を安定に保つことができるように、水素ペレットの入射タイミングを制御することにより、高密度プラズマを長時間維持することに成功しました。
 平成22年度は10月6日から12月24日までプラズマ実験を実施する予定です。今年度はさらなる高温プラズマを実現するために、現在、中性粒子入射加熱装置の増強工事を行っています。また、不純物のプラズマ中への混入を防ぐために、閉ダイバータ装置と呼ばれるものを設置する作業も進めています。これまでに得られた研究成果と報告会で行われた議論を今後の実験計画に生かして、さらに高温度・高密度プラズマを実現して、核融合炉実現に向けた学術研究を進めます。





以上

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