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平成22年5月24日

輸送タスクフォース会議

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 

 

 

 今回は、4月下旬にアメリカで開催された輸送タスクフォース会議の様子をご報告させていただきます。

 2010年4月13日〜16日の4日間、アメリカ・アナポリスのロウズアナポリスホテルにおいて、輸送タスクフォース会議が開催されました。核融合エネルギーを実現するためには、高温プラズマの性質を詳しく調べる必要があります。熱や粒子などがある場所からある場所に伝わったり移ることを「輸送」と言いますが、高温プラズマ中の「輸送」を理解することは、プラズマの性能を高めるためにとても重要です。「タスクフォース」とは任務を遂行する機動部隊の意味なので、「輸送タスクフォース会議」とは、重要な課題である「輸送」を詳細に理解するため、参加者は個々の任務を持って発表して議論する会議、と言うことができます。今回の会議はアメリカ国内の会議でしたが、イギリス、スペイン、ドイツ、フランス、日本などアメリカ国外からの参加もあり、全体でおよそ150名でした。核融合科学研究所からは3名(日本からは5名)が参加しました。
 ワシントンDCの東、ボルチモアの南に位置するアナポリスはメリーランド州の州都であり、1779年に建てられた州議事堂はアメリカ国内最古のものです。アナポリスはまた、海軍兵学校の街としても知られています。会議は参加者全員が出席する本会議と研究対象によって細分化されたグループ会議で構成され、高温プラズマの「輸送」に関する最新の研究成果について議論されました。また、今後の研究の方向性に関する自由討論も行われるなど、「作戦本部」のような雰囲気の漂う非常に活発な会議でした。
 本会議のテーマの1つ「3次元的磁場配位における輸送特性」では、3次元磁場構造を特徴とする大型ヘリカル装置(LHD)に関する講演が2件取り上げられました。コマのような回転対称性を持つ核融合プラズマ装置が多い中、LHDは立体的で複雑な形をした3次元構造です。その特徴が議論されました。熱は温度の高いところから低いところへ伝わるのが普通ですが、LHDでは、プラズマ周辺部を冷やすと遠く離れたプラズマ中心部が暖まるという不思議な現象が見つかり、それに関する新しい解析結果が報告され、大きな関心が寄せられました。また、高温プラズマ内部の粒子などの流れが、周囲と様々に影響し合って、どのように形作られていくのかについて、コンピューター・シミュレーションによる解析結果が報告されました。これらの発表は参加した研究者の興味を大いに引き、非常に活発な質疑、討論が行われました。自由討論会でもLHDの研究成果についての討論が行われるなど、3次元構造であるLHDにおける研究成果が大いに注目され、また、高く評価されました。
 次回の会議は、ヨーロッパとの合同開催となり、スペインのコルドバで2010年9月7日〜10日に開催される予定です。





以上

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