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平成22年7月20日

第37回プラズマ物理に関する欧州会議

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 

 

 

 「プラズマ物理に関する欧州会議」が2010年6月21日から25日までアイルランドの首都ダブリンにあるダブリンシティ大学で開催されました。ダブリンには、アイルランド最古の大学であるトリニティ大学をはじめとするジョージアン様式と呼ばれる歴史的な建造物が多く、たくさんの観光客が訪れる優雅で魅力的な都市です。また、高緯度に位置しているため、会期中は午後10時頃まで外は明るく、サッカーワールドカップ開催期間中ということもあって、会議に参加している世界中の研究者が国の垣根を越えてレストランやパブで声援を送っている姿も見受けられました。
 会議は欧州物理学会が主催し、毎年ヨーロッパの都市を持ち回りで開催していますが、日本や米国など欧州以外からの参加者も多く、プラズマ物理に関する世界最大規模の会議と言えるでしょう。37回目を迎える今回の参加者総数は716名で、日本からの参加者数は33名でした。研究所からの発表が7件、大学等の共同研究者による発表が5件ありました。プログラムは、磁場閉じ込め核融合、基礎・宇宙・天体プラズマ、ビーム・慣性核融合、ダスト・低温プラズマの4つの分野に分かれて発表・議論が行われました。基調講演では、核融合エネルギーを用いて発電を行う原型炉において予想されるプラズマ物理に関する課題、微小で高密度なプラズマの量子化(量子プラズマ)に関する物理、アメリカで数年以内に核融合燃焼実験を試みるレーザー核融合実験装置の進展状況、プラズマを用いた医療応用に関する報告等、プラズマ物理に関して幅広い分野からの発表が行われ、参加者の視野を拡げる内容の濃いものばかりでした。
 研究所からは、大型ヘリカル装置(LHD)におけるプラズマ中の電位とその揺動に関する実験的研究成果が、招待講演として報告されました。LHDでは、数100万ボルトに加速された重イオンビームをプラズマに入射して、プラズマ中の電位を測定しています。最近、プラズマの温度が高くなると炭素などの不純物が減少するという核融合炉に向けて好ましい性質がLHDで発見されましたが、重イオンビームを用いたプラズマ電位の測定により、この性質の物理機構を解明しようとする発表は大きな注目を浴びました。また、LHDの重イオンビーム装置は世界最大規模の計測装置であり、長年の開発とそれを用いた計測結果も高く評価されました。
 本会議では、プラズマ物理学の発展に大きな功績を残したノーベル物理学賞受賞者のアルフベンを称えて、毎回、長年にわたりプラズマ物理の発展に貢献のあった研究者にアルフベン賞を授与しています。今回は、LHDと同じ方式であるステラレータ/ヘリオトロン型の研究の進展に大きな貢献をした米国とドイツの2人の研究者に授与されました。
 次回は、2011年6月27日から7月1日まで、フランス・ストラスブールで開催される予定です。







以上

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