平成22年10月12日
第14サイクルのプラズマ実験を開始します!
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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 |
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核融合科学研究所 |
核融合科学研究所では、本年度、大型ヘリカル装置(LHD)の第14サイクル・プラズマ実験の準備をこれまでに進めてきました。8月中旬にはLHDの装置整備が終わり、真空排気を開始して、真空に漏れがないか入念にチェックしました。そして、9月17日よりLHDの超伝導システムの冷却を開始し、10月11日には−270度への冷却が完了しました。このように準備万端整い、10月12日からは超伝導コイルの通電試験を行い、いよいよ10月14日よりプラズマ実験を開始します。本年度の実験では、加熱電力の増力によりプラズマのイオンの高温度化を図ること、及び高性能プラズマを保持するために鍵となる粒子制御装置を設置してその基本性能の確認を行うことを大きな目標としています。
LHDは平成10年4月の実験開始以来、13年目となります。LHDは我が国独自のアイデアに基づいて、ねじれたドーナツ形状の磁場を超伝導の電磁石で作り、これにより高温のプラズマを閉じ込める研究を行っています。超伝導の電磁石は約850トンあり、超伝導状態にするために、約4週間かけて−270度まで冷却します。このため、実験期間を含めた装置の運転は約半年間に及ぶことから、通常1年に1回の実験期間となり、この期間をサイクルと呼んでいます。平成10年度のみ1年に2回運転しましたので、13年目を迎える本年度は14回目の実験サイクルとなります。今回の実験サイクルでは、12月24日まで延べ11週間の実験を予定しています。この間に約5,000回のプラズマ放電実験を行い、全国の大学・研究機関ならびに海外の共同研究者と共に研究を進めていきます。
第14サイクル実験に向けて、水素原子ビームによるプラズマ加熱装置(中性粒子入射加熱装置)の整備を進めた結果、これまでの2万3千キロワットから2万9千キロワットと約30%の加熱電力の増加が見込めます。またラジオ周波数帯の電波によるプラズマ加熱装置(イオンサイクロトロン共鳴加熱装置)の新型アンテナを設置したことにより、加熱電力がさらに1千キロワット加わります。これにより、これまで得られたイオン温度6,500万度を8,000万度程度まで高めることが期待されます。
また、水素プラズマの純度を高め、不純物などの余分の粒子を排気することが、プラズマ性能を高める鍵となりますが、プラズマが生成される真空容器を改造して、こうした粒子を制御するための装置を設置しました。これまでは磁場の容器から漏れてきたプラズマがガスに戻り、このガスが過剰に溜まることによって、プラズマが冷されたり、不純物がプラズマ中に入ることにつながっていました。この装置によって余分のガスがプラズマに戻らないようにすることが期待されます。本年度行われた部分的な整備によりその性能を確認して、次年度以降の本格的な設置につなげていく計画です。
実験は、安全を最優先に進め、情報の公開に努めます。実験情報は、日々の実験予定表と実験日誌、及び週間実験レポートとして、本研究所ホームページ上で公開します。また、実験の進捗状況についてまとめたものを、配信登録をいただいている方へ、メールでもお知らせします。プラズマ実験期間中は制御室及びLHD本体の様子をライブカメラ映像として、本研究所ホームページからご覧いただくことができます。
第14サイクル実験を安全に遂行し、大きな成果が得られますよう、ご協力、ご支援を、どうぞよろしくお願いいたします。
以上
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