<E-Mailによる情報 No134>
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平成22年11月24日

核融合技術シンポジウム

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 核融合技術シンポジウム(Symposium on Fusion Technology: SOFT)が、9月27日〜10月1日の6日間の日程で、大西洋に面したポルトガルのポルトで開催されました。核融合技術シンポジウムは、欧州の核融合コミュニティが主催する核融合エネルギー炉実現に向けた工学・技術に関する国際会議です。隔年に欧州で開催され、SOFT(ソフト)の愛称で親しまれていますが、会議では、装置を始めとするハードに関する課題が集中的に討議されます。今回で26回目を迎えますが、会議の内容は、稼働中の核融合実験装置から国際熱核融合実験炉(ITER)を含む建設中の装置等を対象に、超伝導コイル、プラズマ加熱機器、計測機器、ブランケット等の炉工学関連機器などにわたり、世界中の研究者が一同に会して、幅広く工学技術や将来の核融合炉設計について最新の研究成果や関連情報を交換する場となっています。会議はドロウ川沿いにあるコングレスセンターで行われ、2つの口頭発表セッションと1つのポスター発表セッションが並行して、計3つの会場で研究発表が行われました。核融合科学研究所からは11件の発表があり、それを含めて日本からの発表は80件ありました。全体の発表件数が約700件でしたので、核融合技術に対する日本の大きな貢献を垣間見ることができます。
 今回の会議では、稼働中のプラズマ実験装置の現状と将来展望や関連機器の要素技術に関する研究成果に加え、フランスのカダラッシュで建設の始まった国際熱核融合実験炉(ITER)に関連する最新の技術が多く取り上げられていたのが特筆すべき内容でした。ITERは国際協力により建設されますが、核融合反応によるプラズマ燃焼実験を初めて本格的に実施することから、様々な機器の開発が必要で、新しい技術も必要とされています。また、ITERのみならず将来の核融合発電炉の設計に向けて日欧が共同で進めている「幅広いアプローチ(BA)」活動の研究発表に対しても、大勢の研究者が聞き入っていたのが印象的でした。会期中には多くの研究者同士で有意義な議論や討論が行われ、参加者はこれまでの理解を深めると共に今後の研究活動に対して貴重な情報を得ることができました。
 また、「ITERプロジェクトの新しい展開」という題名で、核融合科学研究所の前所長で今年7月にITER機構長に就任した本島修ITER機構長が招待講演を行い、ITER建設の現状と今後の予定を報告しました。ITER機構長に就任するにあたっての抱負や現在の心境も織り交ぜながら行われた講演からは、ITER建設に向けた強いリーダーシップが感じられました。 
 最終日には、優れたポスターの研究発表に対して10件の最優秀ポスター賞が授与されましたが、本研究所の尾花哲浩助教が行った核融合用超伝導コイルの導体内部に流れる電流の挙動についての発表もその1つに選ばれました。今後のさらなる研究の発展が期待されます。
 次回は2012年9月にベルギー王国のリエージュで開催される予定です。


以上

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