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平成22年12月6日

第9回 トリチウム科学技術国際会議

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 2010年10月25日から29日まで、奈良公園内にある奈良県新公会堂にて、「第9回トリチウム科学技術国際会議」が開催されました。本会議は1980年に第1回が米国・デイトンで開催された後、約3年ごとに米国、欧州、日本で持ち回りで開催され、今回は本研究所が主催しました。トリチウムは水素同位体の一つで、水素とほぼ同じ性質を持っていますが、放射性の元素であることが特徴です。トリチウムの出す放射線は紙1枚で止めることができる程度に弱く、また、トリチウムは自然環境や人の体内にも存在しています。トリチウムは将来の核融合炉の燃料となるため、その取り扱い等に関する開発研究が行われていますが、その性質から医薬品開発といった産業応用も含めて、幅広い分野で利用されています。本会議は、分野の異なる研究者が「トリチウム」というキーワードのもとに一同に会し、トリチウムという一つの元素に関する研究成果を発表し議論することを特徴としたユニークな国際会議と言えます。今回の会議では、日本を含む16カ国から総勢271名(日本からは125名)が参加しました。日本や米国、欧州からの多くの参加者とともに、中国、韓国からの参加者が目立ったのも今回の特徴でした。
 プログラムは15の研究分野に分けられ、トリチウムの自然環境中の動きや変化、生体への影響、産業応用、精製や同位体分離、安全取扱・管理手法、測定手法、材料との相互作用など、幅広い分野からの発表講演が行われました。基調講演では、現在フランスで建設が進められている国際熱核融合実験炉(ITER)におけるトリチウムの取扱技術、安全評価などに関する報告があり、運転に向けた着実な進展が示されました。環境生物分野では、トリチウムの大気循環、水理学や植生中トリチウムに関する研究成果、低線量放射線に関する研究などが報告されました。また、応用研究として、トリチウムから放出されるニュートリノの質量を測定するという野心的な試みも紹介されました。この測定が成功すればノーベル賞級の成果となるものです。口頭発表講演は公会堂内の能楽堂で行われましたが、能舞台上での発表講演は、登壇者だけではなく聴衆の参加者にとっても印象深いものでした。
 研究所からは1件の口頭発表と13件のポスター発表が行われました。口頭発表では、有機金属化学蒸着法による水素透過防止膜の作成に関する研究成果が報告されました。ポスター発表では、トリチウムの自然環境の動態、安全取扱に関する研究、測定手法等に関する実験・理論的な研究などが報告され、参加者と活発な議論が交されました。
 次回は、2013年にITER建設国であるフランスのニースで開催される予定です。


以上

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