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平成22年12月20日

第23回IAEA核融合エネルギー会議報告

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 10月11日から16日まで、「第23回核融合エネルギー会議」が韓国のデジョン市(大田広域市)で開催されました。本会議は国際原子力機関(IAEA)が主催して2年に一度開催される世界最大の核融合に関する会議で、発表される論文は国内選考、国際選考を経て選ばれることから、核融合研究分野におけるオリンピックとも言える会議です。今回は、トカマク型の超伝導装置であるKSTARを建設して核融合研究を精力的に進めている韓国がホスト国でした。世界の核融合関連の研究者が集まり、核融合の実現に向けた数々の研究の成果が発表されましたが、参加国は39カ国、参加人数は1500名にのぼり、596件の論文の発表が行われるなど、これまでで最大の会議となりました。核融合科学研究所からは60件の論文の発表があり、そのうち大型ヘリカル装置(LHD)からは30件の発表がありました。
 開会式には韓国のKim Hwang-Sik首相が出席するなど、韓国としてこの会議を非常に重要なものと位置付けていることがうかがわれました。会議は、世界の主要な実験装置の成果の概要が報告される講演セッションと、より専門的な分野の議論を行う講演セッションで構成されていました。専門分野としては、「国際熱核融合実験炉(ITER)」、「磁場閉じ込め実験」、「磁場閉じ込めの理論」、「慣性核融合の実験と理論」、「革新的な閉じ込め方式」、「核融合技術」、「核融合の安全性や環境影響、経済性」に分けられていました。
 ITERは、日本・欧州連合・ロシア・アメリカ・韓国・中国・インドの7極により進められている計画で、核融合関係者のみならず世界中の人々が注目しています。トカマク型装置であるITERでは、プラズマの外側周辺で起こるプラズマの振動が設計上の問題となっており、その抑制・制御が非常に重要な課題として挙げられています。この課題に対して、最近、プラズマ中の3次元の磁場構造の効果について関心が高まっています。トカマク型もLHDのようなヘリカル型もドーナツ形状をした磁場閉じ込めプラズマ装置ですが、トカマク型装置はドーナツの断面をどこで切っても同じ形状なため、基本的には2次元的な磁場構造をしています。一方、ヘリカル型装置は3次元の磁場構造なため、ドーナツをどこで切るかによって断面形状が異なります。この3次元の磁場構造に起因する現象についての研究成果がLHDから報告されました。LHDに特徴的な高密度運転やプラズマを閉じ込める性能が3次元磁場構造の観点から議論されましたが、ITERをはじめとするトカマク型装置の課題解決へ向けて研究されている、3次元的な磁場構造を付加した時の効果に対して、LHDの成果は大きなインパクトを与えました。
 閉会式では、盛大に行われた会議の運営に対して、実行委員長のG. S. Lee氏が「そのくらい我々は真剣なのです」と熱く話していたのが印象的でした。
 次回は2012年に、アメリカがホスト国となり、サンディエゴで開催される予定です。


以上

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