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平成23年1月11日

第52回 アメリカ物理学会 プラズマ物理分科会

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所


 アメリカ物理学会プラズマ物理分科会が、2010年11月8日から12日までアメリカ合衆国のシカゴで開催されました。シカゴは大きな会議や展示会が頻繁に開催されるコンベンションセンターの街として有名で、会場のホテルも地下に大きな会議場を備えていました。
 アメリカ物理学会のプラズマ物理分科会は、アメリカ国内最大のプラズマ物理分野の会議で、毎年1回11月頃に開かれ、今回で52回目となりますが、アメリカ国内のみならず、日本や欧州などからも多数の参加者のある国際的な会議でもあります。会議は最終日を除き、学術講演が朝8時から夕方5時まで行われるのに加えて、5時半以降には、タウンミーティングやパネルディスカッションが開かれ、「ITERの現状の紹介」、「伝統的な教育研究職と非学術的研究職の対比」、「大学における核融合研究のあり方」等に関するテーマで、発表や意見交換が夜の9時過ぎまで行われていました。
 学術講演は、毎朝8時から9時の間は1会場のみを使用して、プラズマ物理の分野で現在注目されている研究に関する最新の解説(レビュー)講演と今年度の「マクスウェル賞」の受賞講演が行われました。その後、4〜8ヶ所の会場に分かれて招待講演と口頭発表が終日行われ、それと並行して1つの会場でポスターセッションが開催されるという形式でした。内容は、磁場閉じ込め・慣性核融合プラズマから基礎・応用プラズマ、宇宙プラズマと幅広い分野にわたっています。発表件数は、招待講演が約100件、口頭発表が400件強、ポスター発表が1300件弱でした。また、1日1件、主に大学院生を対象として、プラズマ物理のある分野に特化した1時間程度の講義が、招待講演・口頭発表と並行して行われました。同じく招待講演・口頭発表と並行して、プラズマ物理に関連した4つの分野でミニ会議が行われ、60件強の口頭発表がなされました。日本国内最大のプラズマと核融合に関する会議である「プラズマ・核融合学会年会」の発表総数が400件程度であることと比較すると、全発表件数で4倍ほどとなる大きな規模の会議といえます。これは、アメリカにおけるプラズマ物理研究の裾野の広さに加えて、アメリカ以外の国からも多数参加していることにも、その要因がありそうです。ポスター会場では、1回当たり150件前後のポスターが1ヶ所のホールに一斉に貼られ、そこに発表者と聴衆合わせて400名程度の研究者が集まって行き来して、熱心に議論していましたが、その様子は非常に印象的でした。
 研究所からは、大型ヘリカル装置(LHD)において、電磁流体不安定性がプラズマの閉じ込め性能に与える影響に関する実験的研究成果が、招待講演として報告されました。LHDでは、核融合炉心プラズマと同程度の高いベータ値(磁場強度とプラズマ圧力の比で、この値が高いほど効率的な発電が可能)のプラズマが達成されていますが、このようなプラズマの閉じ込め性能が、電磁流体不安定性によりどの程度劣化するかについての発表は注目を浴びました。
 次回は、2011年11月14日から18日まで、ユタ州ソルトレークシティで開催される予定です。

以上

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