<E-Mailによる情報 No142>
HOME > 研究活動 >> 研究活動状況 >> 「自然科学における階層と全体」シンポジウム
 

平成23年2月14日

「自然科学における階層と全体」シンポジウム

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所


 平成23年1月18日、19日の2日間にわたって、名古屋駅に近い安保ホールを会場として、「自然科学における階層と全体」シンポジウムを開催しました。このシンポジウムは、自然科学研究機構の3つの研究所である国立天文台(東京都三鷹市)、分子科学研究所(愛知県岡崎市)、核融合科学研究所が共催で開催しました。シンポジウムには全国の大学・研究機関から31人の参加があり、活発な議論が行われました。
 「階層と全体」とは何でしょうか?例えば生物では、細胞が集まって肺などの器官を作り、器官が集まって一つの個体を形作って生命が営まれています。そして、細胞・器官・個体のように、それらを構成するモノを特徴づける大きさや活動する時間などがそれぞれで異なっている場合、それらには「階層」が存在するといいます。この階層は生物に限った話ではありません。宇宙では、宇宙を漂う塵(ちり)のような小さな階層から、恒星や惑星、それらが集まって作られる太陽系、さらには太陽系が集まって銀河や銀河団というような巨大な階層が形作られています。もちろん、プラズマにも階層があって、原子や分子という小さな階層から大型ヘリカル装置のような実験装置という大きな階層があります。このように自然界の多くの現象には、小さな階層から大きな階層まで、いくつもの階層で構成され、それぞれの階層で異なる原理、物理が働いています。さらに、それぞれの階層は独立ではなく、お互いに影響を与えながら、たいへん複雑な現象が発生しています。これまでの科学では、それぞれの階層での物理を研究してきましたが、現象のすべてを統一的に調べるためには、階層の間でお互いがどのように影響しているかを考えながら、小さな階層から大きな階層までを同時にかつお互いに矛盾なく、「全体」を調べる必要があります。現在、自然界におけるこのような階層を横断する複雑な現象を調べるために、スーパーコンピュータ(スパコン)を用いた先進的なシミュレーション手法が、様々な分野で精力的に開発研究されています。
 このような自然科学の各分野で行われている階層と全体に関する学術研究の交流、自然科学の各分野で蓄積されている知恵やノウハウの発掘、および階層を横断する複雑な現象をシミュレーションするための手法とその応用に関する議論や検討を目的として、「自然科学における階層と全体」シンポジウムが開催されました。
 シンポジウムでは、各分野の壁を越えた学際的な研究テーマとして、「プラズマと物質の相互作用」、「低電離プラズマと磁気リコネクション」、「物体の表面現象」といったテーマを取り上げ、研究分野にとらわれない活発な議論がなされました。また、今回のシンポジウムでは、若手による発表を中心にプログラムされると共に、分野を越えた今後の共同研究の可能性についての意見交換もなされました。このシンポジウムを通じて、「自然科学における階層と全体」という新しい研究分野の着実な歩みが実感されました。


以上

コピーライト