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平成23年3月28日

高ベータ研究−効率よくプラズマを閉じ込める−

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所


 平成22年度の大型ヘリカル装置(LHD)のプラズマ実験で得られた成果を紹介しています。今回は、プラズマをいかにして効率よく閉じ込めるか、という課題に取り組んでいる高ベータ研究を紹介します。

 核融合エネルギーを取り出すためには、超高温のプラズマを閉じ込める必要があります。プラズマは薄いため、容器の壁に触れると冷やされてしまい、温度を上げることができません。そこで、磁石の力を使ってプラズマを宙に浮かすための「カゴ」をつくり、そこにプラズマを生成して閉じ込めます。磁石からは磁力線と呼ばれる、目に見えない磁石の力の線が出ています。磁力線の様子は、たとえば砂鉄の上に棒磁石をおいてやると見ることができます。
 LHDでは、巨大な超伝導電磁石によってドーナツ状の磁力線の「カゴ」を作り、プラズマを閉じ込めています。プラズマは温度が上がると外側に広がろうとしますが、磁力線で作ったカゴは、ゴムひものように張力を持っているので、プラズマを内側に抑えつけようと締め付けます。このようにして、プラズマを宙に浮かして閉じ込めているのですが、どれくらい効率よくプラズマを閉じ込めているかを表す指標に「ベータ値」があります。ベータ値は、(プラズマが外に広がろうとするエネルギー)と(プラズマを締め付ける磁場のエネルギー)の比によって表されます。このベータ値が大きいほど、プラズマを効率よく閉じ込めることのできる装置であるといえます。
 ところが、プラズマは磁力線のカゴを変形させる力を持っているため、話は簡単ではありません。プラズマがない時に、いくら性能のよいカゴを作ったとしても、プラズマを生成して温度を上げると、磁力線のカゴの性質が変わってしまうため、なかなかベータ値を上げることができないのです。そのため、単に磁力線のカゴの形だけではなく、プラズマによってカゴの形がどのように変化するのかを詳しく調べるのが、LHDにおける高ベータ研究の目的です。
 LHDでは、プラズマの温度が上がってエネルギーが大きくなると、プラズマを閉じ込めているドーナツ形状のカゴが外側に膨れる方向へ移動します。高いベータ値を実現するためには、このカゴの移動を抑えることが必要です。LHDでは、あらかじめベータ値とカゴの移動量の関係を理論計算やコンピューターを使って見積もることで最適なカゴの形状を作り、それにより高ベータプラズマを実現しています。
 LHD型の核融合発電所を実現するためには、5%程度のベータ値が必要です。LHD実験では、将来の核融合発電所に必要とされる磁場の強さの5分の1程度(1万ガウス)で4〜5%の高ベータプラズマを閉じ込めることを目標にしています。少し弱い磁場の強さ(約4000〜5000ガウス)では、すでに5%を超えるベータ値を達成しています。H22年度の実験では、1万ガウスで3%を超える高ベータプラズマを生成・閉じ込めることができました。LHD実験の目標達成に向けて、研究が進展しています。


以上