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平成23年4月25日

周辺プラズマ研究 −プラズマの周辺部をコントロールして性能を上げる−

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所


 平成22年度の大型ヘリカル装置(LHD)のプラズマ実験で得られた成果を紹介しています。今回は、プラズマの周辺部をコントロールすることによりプラズマの性能を上げよう、という課題に取り組んでいる周辺プラズマ研究を紹介します。

 核融合発電を実現するためには、高真空の容器の中で燃料ガスをプラズマ状態にし、それを超高温にして連続的に保持する必要があります。その際、プラズマが直接容器の壁に接すると、容器表面から「不純物」が混入してプラズマを冷やしてしまうため、十分に温度を上げることができなくなります。そこで、容器の壁からプラズマを離すために、磁場の「カゴ」によってプラズマを閉じ込めています。しかし、それでもある程度の不純物がプラズマの端(周辺)の部分から侵入してきますので、それをいかにコントロールして温度の高い中心部のプラズマに影響を与えないようにするかが、プラズマの性能を決める重要な要因の一つになります。そのため、プラズマの周辺部の研究を精力的に行っています。
 温度の高い中心部のプラズマへの不純物混入を抑制するために、磁場のカゴの形を変えて、一番外側のプラズマを中心部のプラズマから遠く離れた場所に導き、そこに受熱板を置いてプラズマを終端させています。受熱板には周辺部の比較的温度の低いプラズマが入りますが、長期間にわたって受熱板を使用するためには、入り込むプラズマの熱エネルギーを低く抑えることが必要になります。プラズマは温度が十分に低くなると、持っていたエネルギーを光として放出するようになりますので、それを利用して受熱板への入熱を減らすことができます。
 今回の実験では、この低温プラズマを利用して受熱板への入熱を軽減する方法を二つ試みました。一つは、「磁気島」と呼ぶ磁場構造を周辺部に作り、そこに低温プラズマの領域を固定する方法です。磁気島というのは、大きな磁場のカゴの中にある、別の小さな磁場のカゴのようなものです。一般に、低温プラズマの領域が周辺部にとどまらずに温度の高い中心部へ移動すると、プラズマの性能が劣化してしまいます。そこで、周辺部に磁気島を作り、低温プラズマの領域を安定に固定することを試みました。その結果、プラズマの性能を高く保ったまま、受熱板への入熱を軽減することに成功しました。もう一つは、エネルギーを光として放出しやすい不純物を、あえて周辺領域に少量供給する方法です。温度の高い中心部ではプラズマを冷やしてしまう厄介者の不純物を、ここでは逆に利用しているのです。今回の実験では、ネオンガスを入射した結果、受熱板への入熱の軽減に成功しました。
 こうした周辺プラズマの研究を進めることにより、より性能の高いプラズマをつくることができると期待されます。


以上