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平成23年7月19日

第38回プラズマ物理に関する欧州会議

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 6月27日から7月1日までフランスのストラスブールにおいて、第38回プラズマ物理に関する欧州会議が開催されました。本会議は、欧州物理学会が主催する国際会議で、核融合プラズマ、ビーム・レーザープラズマ、低温プラズマ、宇宙プラズマ等、広範な分野における様々なプラズマを対象として、毎年開催されています。今回は開催国であるフランスを中心に、ドイツ、アメリカ、ロシア、日本など各国から総勢714名、そのうち核融合科学研究所からは10名の参加がありました。開催地のストラスブールは、TGVでパリから東へ2時間半程行った所にあるドイツに隣接した街です。ドイツ語で「街道の街」と呼ばれ、商工業が盛んだそうです。中心部にはノートルダム大聖堂、郊外には古城やコウノトリ飼育センターなどの名所・旧跡も多数あります。
 会議初日にはハンス・アルベン賞の受賞記念講演がありました。アルベンはプラズマ中の波動伝搬の基礎を築いた物理学者で、1970年にノーベル物理学賞を受賞するなど、プラズマ物理の発展に大きな貢献をしました。それを称えたアルベン賞が、プラズマ物理の研究に顕著な成果を収めた研究者に、毎回この欧州会議の場で与えられます。今回は長谷川阪大名誉教授、三間阪大名誉教授、ダイアモンド・カリフォルニア大教授の3氏に、高温プラズマの閉じ込めに関する理論的な研究の功績に対して授与されました。2日目にはイノベーション賞の受賞記念講演がありました。原子力研究開発機構の坂本博士が、ロシアとドイツの研究者と共に、大電力ミリ波源(ジャイロトロン)開発の功績により受賞しました。大電力ミリ波源の開発により、それを用いたプラズマ加熱性能が向上し、核融合プラズマの定常化・高性能化に大きく貢献しています。3日目には本島修・国際熱核融合エネルギー機構長から、フランスで建設が始まっている国際熱核融合実験炉ITERの現状報告がありました。このように、欧州を中心とした会議の場で日本人の研究成果が高く評価されると共に、国際的なプロジェクトを日本人が牽引するなど、核融合を中心としたプラズマ物理研究の推進に対する日本の大きな貢献が感じられました。
 研究所からは、大型ヘリカル装置LHDにおいて開発した、大強度の電磁波を用いてプラズマ中のイオン温度を計測する手法について、最新成果を報告しました。核融合プラズマ関係では、大型核融合実験装置やITERに関連した物理・工学研究、高温プラズマ閉じ込めに関する研究など多数の発表がありました。そして、核融合エネルギーの実現に向けて、プラズマ物理の観点から活発な討論が行われました。
 次回の会議は2012年7月2日〜6日にスウェーデンのストックホルムにおいて開催される予定です。


以上