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平成23年8月1日

高温プラズマ研究 −より高い温度のプラズマを目指して−

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 平成22年度の大型ヘリカル装置(LHD)のプラズマ実験で得られた成果を紹介しています。最終回となる今回は、プラズマの温度を如何にして上げるか、という課題に取り組んでいる高温プラズマ研究を紹介します。

 核融合発電を実現するためには、プラズマの温度を1億度以上にする必要があります。核融合発電では、原子核同士がぶつかって合体(融合)した時に発生するエネルギーを利用するため、燃料ガスを原子核(イオン)と電子がバラバラになったプラズマ状態にします。そして、原子核であるイオンはプラスの電気を持っているので、その電気的な反発力に打ち勝って合体させるためには、イオンの温度を上げて、ぶつかる時のエネルギーを大きくする必要があります。持続的に核融合反応を起こして、外部にエネルギーを取り出すのに必要なイオンの温度が1億度なのです。
 このように、核融合を実現するために必要なプラズマ(イオン)温度の条件がわかっているので、大型ヘリカル装置(LHD)では、核融合反応を起こさない水素ガスやヘリウムガスを用いて、高温プラズマを実現する研究を行っています。高い温度のプラズマを実現するためには、プラズマの持つ熱を逃げにくくする必要があります。建物の内外の熱の出入りを遮断するために、出入口にエアーカーテンを設置して、空気の流れによる「カベ」を作ることを行いますが、プラズマに対しても同様に、内部にプラズマの流れを作り、それによりプラズマ中の熱が逃げるのを防ごうとする研究がLHDで進められています。
 その一つの方法として、プラズマの中に炭素の小さな「つぶ」(ペレット)を打ち込み、それにより熱の閉じ込めを向上させるプラズマの流れを引き起こすことが行われています。この手法により、これまでに6,500万度というイオン温度を達成していましたが、平成22年度の第14サイクル実験では、プラズマ中のイオンを加熱する装置を増強し、さらに炭素のペレットを入射する実験方法の最適化を行うことにより、イオン温度を7,500万度にまで上げることに成功しました。
 一方、プラズマ中の電子の温度も高くする必要があるため、電子を加熱する装置を増強して、プラズマ中心部の電子を強力に加熱しました。すると、電子の熱が逃げるのを防ぐ「カベ」がプラズマ中に形成され、その結果、密度は低いものの2億3,000万度の電子温度を達成しました。核融合を起こすのはイオンなので、LHDにおける1億度のプラズマ温度の達成を目指して、今後はイオンと電子を同時に高温にすることが重要な課題となります。
 平成23年度のLHDの第15サイクル・プラズマ実験を7月28日に開始しました。核融合発電の実現を目指して、さらにLHDのプラズマ性能を高めていきます。次回からは、第15サイクルの実験成果を含めた研究内容の紹介を随時行っていきますので、お楽しみにして下さい。


以上