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平成23年11月28日

2億3000万度を測る −光を用いたプラズマ温度計測−

 

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 大型ヘリカル装置(LHD)の実験・研究内容を随時紹介しています。今回は、レーザー光を用いて2億度を超える超高温のプラズマ電子の温度を計測する研究を紹介します。

 LHDでは昨年度、プラズマ中の電子を最高2億3000万度まで加熱することに成功しました。また本年度には、それを上回る電子温度を実現しています。2億度という温度はちょっと想像できませんが、どうやって測るのでしょうか。ガラスは1,000度前後で、鉄や銅は1,500度前後で溶けてしまうので、普通の温度計では測れませんし、そもそも温度計をプラズマの点いている真空中に入れることができません。このような超高温のプラズマ温度の測定そのものは研究の対象であり、ここでは『光』を利用しています。光なら2億度のプラズマの中へも簡単に入れることができます。
 救急車のサイレンの音は、救急車が近づいてくる時は高い音に聞こえ、遠ざかる時は低い音に聞こえます。この現象をドップラー効果といいますが、速度取り締まり、いわゆる「ねずみ取り」でもこの原理が使われており、走行する車に電波を当てて、跳ね返ってきた電波を観測することにより車の速度を測っています。ドップラー効果は光でも観測できるため、プラズマ中で激しく動き回っている電子に光を当てると、跳ね返ってきた光から電子の速度を測定できます。速度がわかると、その速度から温度を求めることができます。
 LHDでは強力なレーザー光線をプラズマへ入射して、プラズマ中の電子の温度を求めています。2億度のプラズマ電子は光の速度の1/3程度、秒速10万kmぐらいの非常に速い速度で運動している上、電子の直径は1ナノメートル(10億分の1メートル)のさらに10万分の1以下と非常に小さいので、光を当てて跳ね返ってくる光を観測しようとしても、なかなか光を当てることができません。LHDのプラズマでは、入射した光が電子に当たって跳ね返ってくる確率は1,000億分の1と非常に低いものです。そのため、強力なレーザー光を入射する必要があります。LHDでは2億ワットという強力なレーザーパルスを発生できるレーザーを利用していますが、それでも跳ね返ってくる光は非常に弱く、人の目では感じられないくらいの強さしかありません。そこで、光の粒を1個、2個の単位でも検出できる超高感度な光検出器を用います。さらに、同じ条件のプラズマを繰り返し生成して測定することにより、測定精度を上げています。
 1億度、2億度という高温プラズマを発生させるためにLHDでは数多くの先端技術が用いられていますが、そのプラズマ温度の測定にも、様々な最先端の光技術が応用されています。


以上