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平成24年2月27日

高性能のプラズマを長い時間保持する ―定常波動研究―

 

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 平成23年度の大型ヘリカル装置(LHD)のプラズマ実験で行われた研究内容を紹介しています。今回は、電磁波を用いて高温・高密度のプラズマを長い時間保持することに取り組んでいる、定常波動研究について紹介します。

 将来の核融合発電所では、高温のプラズマ状態になった水素の原子核同士が高速で衝突することにより核融合反応が生じ、その際に生み出される大きなエネルギーを利用して発電します。それを目指してLHDでは、プラズマの温度や密度を如何にして上げるか、あるいは、性能の高いプラズマを如何にして安定に閉じ込めるか、ということを主に研究しており、通常は2〜3秒間しかプラズマを点けていません。一方、将来の核融合発電所では、1年以上の長期間にわたって連続的に発電しなければなりませんので、高性能のプラズマを如何にして長い時間保持するのか、というのは重要な研究課題です。そのため、数分〜1時間近く連続的にプラズマを保持する研究も進めています。
 LHDのようなヘリカル型装置は、プラズマを閉じ込める磁場そのものは定常的に、つまり望む限りの長い時間、保つことができます。しかし、そこにプラズマを長い時間保持しようとすると、さまざまな原因でプラズマが維持できなくなり、途中で消えてしまいます。その原因を究明し、課題を克服するために、実験を繰り返して改良していく必要があります。
 高温・高密度のプラズマを長い時間保持するため、「定常波動」実験では、プラズマの加熱に電磁波(波動)を用いています。イオンサイクロトロン共鳴周波数帯加熱(ICRF)法では、FMラジオで使われている周波数帯に近い38.4MHzの電磁波を用いてプラズマを加熱していますが、電磁波をプラズマに放射するアンテナを改良して、効率良くプラズマに高い電力を吸収させることができるようになりました。その結果、これまでより高い密度のプラズマを数分間保持することに成功しました。
 また、電子サイクロトロン共鳴加熱(ECH)法では、電子レンジに使われる周波数(2,450MHz)の約31倍の77,000MHzの電磁波でプラズマを加熱していますが、電磁波の発振管の出力電力を増加させるとともに、大電力の電磁波を伝える伝送路を改良して、長時間実験の際にプラズマに入力できる電力を大きくすることができるようになりました。
 このように、ICRF法、ECH法それぞれの改良によって、これまでより高い密度の高性能なプラズマを数分以上にわたって保持することができるようになりましたが、さらに長い時間プラズマを保持しようとすると、多くの場合、途中でプラズマが消えてしまいます。その原因として、大電力の電磁波の発振装置の運転が不安定になりプラズマの安定な加熱ができなくなる、真空容器の壁などから汚れ(不純物)やガスがプラズマに向かって吐き出されてプラズマが冷やされてしまう、プラズマに供給する燃料ガスの量とプラズマ状態のバランスがくずれてしまう、などがあります。
 今後は、これらの原因を調べて、加熱装置の改良、真空容器の壁などの状態の改良、燃料ガスのコントロール手法の改良等を重ねることにより、さらに高性能なプラズマをより長時間保持できるようにしていきます。


以上