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平成24年3月12日

核融合発電所のプラズマを予測する −核融合発電プラズマの設計研究−

 

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 大型ヘリカル装置(LHD)では、核融合発電の実現を目指して、プラズマの性能を高める研究を行っています。そして、現在得られているLHDの性能を基に、将来のヘリカル型核融合発電所の設計研究も進めています。今回は、LHDの実験結果を用いて、核融合発電所を設計する上で重要な核融合発電プラズマの性能を予測するという研究を紹介します。

 LHDはとても大きな装置ですが、将来の核融合発電炉はどのくらいの大きさになるのでしょうか?――検討の結果、その答えは「LHDの4倍」となりました。現在設計が行われているヘリカル型核融合炉「FFHR-d1」の装置サイズはLHDのちょうど4倍、そして、プラズマを閉じ込める磁場の強さは、LHDの3万ガウスに対して約5万ガウスとなります。では、このような核融合発電炉では、一体どのようなプラズマができるのでしょうか?この疑問に答える実験をLHDで行っています。
 プラズマの性能を表す指標(パラメータ)の一つに、「エネルギー閉じ込め時間」があります。これは、プラズマの持つエネルギーがどれくらいの時間で失われるかを示すもので、いわばプラズマの冷めにくさを表しています。プラズマの大きさ、磁場の強さ、プラズマに含まれる粒子の数などが大きくなると、エネルギー閉じ込め時間が長くなることがこれまでの研究でわかっています。このように、あるパラメータ(ここではエネルギー閉じ込め時間)が他のパラメータ(ここでは大きさ等)にどのように依存するかを表す関係式を「スケーリング(比例則)」と呼び、このスケーリングを用いて未知の領域のパラメータを推定することを「外挿」といいます。この外挿により、将来の核融合発電プラズマの性能を予測することができます。
 スケーリングによる外挿が、必ずしも正しいとは限りません。そのため、その信頼性を上げることは重要な研究テーマになっています。信頼性を上げる一つの方策は、スケーリングのもとになる実験データが得られたLHDの条件と、外挿する先の核融合発電プラズマの条件をできるだけ同等にすることです。例えば、LHDでは通常2本のヘリカルコイルと6本の円形コイルを用いてプラズマを閉じ込める磁力線の「かご」を作っていますが、それぞれのコイルに流す電流の比を変えると「かご」の性質が変わり、プラズマの性能に大きく影響します。信頼性の高い外挿を行うためには、核融合発電炉とLHDのコイルの配置条件及びコイルの電流比を等価にする必要があります。
 FFHR-d1では、設計の合理化の結果、円形コイルの数をLHDの6本から4本に減らしていますが、4本の円形コイルの位置はLHDと相似にしてあります。そこで、FFHR-d1と等価なコイル条件にするため、LHDにおいて、対応する4本の円形コイルとヘリカルコイルのみに電流を流してプラズマ実験を行いました。
 円形コイルを4本しか使わない場合、プラズマの性能が悪くなることも懸念されましたが、実験の結果、プラズマ性能の劣化は観測されておらず、それどころかむしろ良い面があることがわかりました。現在この結果を検証し、その理由を検討しているところですが、こうした思いがけない結果は実験の醍醐味でもあり、今後の研究の発展につながります。この実験は今後も引き続き行い、核融合発電炉のプラズマ性能を明らかにしていく予定です。


以上