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平成24年4月23日

水素とヘリウムの圧力を計る −核融合プラズマの燃料ガスと排気ガス−

 

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 大型ヘリカル装置(LHD)のプラズマ実験で行われている研究内容を紹介しています。今回は、将来の核融合プラズマ発電の燃料となる水素ガスと排気ガスとなるヘリウムガスの圧力を計る研究について紹介します。

 将来の核融合発電所では、水素の仲間である重水素と三重水素を燃料ガスとしてプラズマ中に供給し、燃焼させます。そして、燃焼の結果、ヘリウムが灰として生成され、排気ガスとなります。このとき、ヘリウムがプラズマの中心にたまってしまうと、燃料が薄まってしまい、燃焼効率が低下してしまいます。そのため、プラズマ中へ燃料の水素を供給する一方、灰であるヘリウムをプラズマから効率よく取り除くことが必要です。
 LHDではプラズマの燃焼の研究は行っていませんし、行う予定もありませんが、水素ガスやヘリウムガスをプラズマ中に供給することにより、将来の核融合プラズマ発電における燃料ガスと排気ガスのプラズマ中での振る舞いを調べることができます。
 プラズマは磁場の「カゴ」に閉じ込められていますが、外側の磁場のカゴの形を工夫して、プラズマの中心部から外に出てくる粒子をダイバータと呼ばれる場所に集めています。このダイバータに掃除機のようなポンプを置いて、集めた粒子を排気すれば、効率よく灰であるヘリウムを除去することができます。そして、ダイバータに多くの粒子を集めることができれば、つまり圧力を高くできれば、排気の効率が上がることになります。一方で、燃料粒子である水素はプラズマの中心部に長くとどまっている方がよいため、プラズマに供給した水素とヘリウムが、それぞれダイバータにどれくらい集まってくるのかを調べることは重要です。
 LHD では、一部のダイバータの形状を変更して、そこでの粒子の捕集効率を向上させる、つまりガス圧力を高くする実験が行われています。水素のみを供給したプラズマでは、この形状のダイバータでガス圧力が高くなっている、つまりその領域に水素が圧縮されていることを確かめました。そこで、ヘリウムについても確認するため、水素とヘリウムをプラズマに供給して、ダイバータでの水素とヘリウムの圧力をそれぞれ同時に調べる実験が行われました。
 水素とヘリウムの圧力は、「ペニング真空計分光」という計測方法で計ります。真空計の中でガスを放電させると、水素やヘリウムに特有の光が出てきます。その特有の光の強さを計測することで、水素やヘリウムの圧力を求めることができます。それにより、ダイバータ領域では、ヘリウムも水素と同様に、他の領域に比べて10倍程度の圧力に圧縮されていることが分かりました。この結果から、ダイバータ領域にガスを排気するポンプを設置することにより、ヘリウムの効率的な排気が可能になることが期待されます。


以上