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平成24年12月17日

プラズマ・核融合学会 第29回年会

 

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 2012年11月27日から11月30日までの4日間、福岡県春日市のクローバープラザにおいて「プラズマ・核融合学会 第29回年会」が開催されました。これは年に一回、プラズマ・核融合学会が主催する講演会で、プラズマと核融合に関する研究者が一同に会し、研究発表を通じて意見交換をする場となっています。今回の年会には国内外の大学・研究機関から607名の参加があり、基調講演、招待講演、一般口頭発表、ポスターセッションなどで、合わせて492件の研究発表が行われ、活発な議論が交わされました。特定の研究テーマのシンポジウムも6セッション企画され、密度の濃い発表・討論が行われました。また、一般市民向けの特別講演も実施されました。
 年会初日には、平成24年度のプラズマ・核融合学会賞の表彰式、ならびに受賞記念講演が行われました。核融合科学研究所からは森田繁教授、董春鳳博士、後藤基志准教授が「制動放射連続光を用いた極端紫外分光器の絶対感度較正法の確立」で第17回技術進歩賞を、時谷政行助教が「ヘリウムプラズマ照射と Mixed-material 堆積層形成による核融合装置プラズマ対向材料の表面変質とそれらが燃料粒子捕捉特性へ与える影響」で第17回学術奨励賞を受賞し、それぞれ記念講演を行いました。
 今回の年会では、日本と欧州の国際協力で進められている核融合原型炉の設計・開発研究活動の現状と最近の成果が基調講演で報告されるなど、将来の核融合発電所の実現に向けた工学研究の進展が見られました。また、大型ヘリカル装置(LHD)をはじめとして、高温プラズマ研究の成果も数多く発表されるとともに、医療応用、材料プロセス等へのプラズマ応用の研究についても活発な議論が行われました。
 特別講演では、九州大学の大屋裕二教授が「風力発電と風レンズ」について講演されました。昨今、再生可能エネルギーとして太陽光発電や風力発電が注目されています。日本は海に囲まれているため、領海・排他的経済水域を合わせるとその面積は世界第6位となり、海上での風力発電は大きなポテンシャルを有しています。大屋教授の研究グループでは、風車の周りに特殊なフードを付けた「レンズ風車」を開発し、この風車を用いた風力発電システムを博多湾に浮かべて浮体実証試験を行っています。レンズ風車は風の出口付近で強い渦(乱流)が発生し、その渦がより多くの風を風車内に引き込みます。このような乱流現象はプラズマ中でも観測されることから、プラズマ研究者にとっても興味深い講演でした。特別講演は一般の方にも公開されていたため、参加した高校生も新エネルギー開発の最前線の話題に熱心に耳を傾けていました。
 年会では毎回、若手学会発表賞を設けて、若手の優れた発表を表彰しています。今回は、8件の発表が受賞しました。本研究所からは、杉田暁博士が「周辺乱流シミュレーションにおける弾道的な伝搬現象の統計的性質」の発表で、伊藤篤史助教が「タングステンナノ構造のマルチスケールシミュレーション」の発表で、それぞれ受賞しました。2人の今後の活躍が期待されます。
 次回の年会は、2013年12月3日から12月6日に東京工業大学で行われる予定です。


以上