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平成25年2月4日

大型超伝導コイルの開発を目指して −超伝導導体試験−

 

 

  大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
 

核融合科学研究所

 大型ヘリカル装置(LHD)は、世界最大の超伝導核融合プラズマ実験装置です。LHDの建設に際して、超伝導コイルの開発を独自に行うなど、研究所は世界有数の大型超伝導装置開発のための技術と試験設備を有しています。現在、日本とヨーロッパが協力して、JT-60SAというトカマク型の超伝導核融合プラズマ実験装置の建設が、茨城県の日本原子力研究開発機構(JAEA)で進められています。それに協力するため、研究所はJAEAと共同で、JT-60SAの超伝導磁石に使用する超伝導導体の性能試験を行っています。今回は、研究所の試験設備を用いて行ってきたJT-60SA用超伝導導体の試験について紹介します。

 JT-60SAは、日欧の国際協力により建設されるトカマク型の超伝導装置で、その超伝導コイルには、ケーブル・イン・コンジット導体(CIC導体)という超伝導導体を使用します。CIC導体は、数百本もの細い超伝導線を幾重にもより合わせて超伝導ケーブルにして、頑丈なステンレスの配管の中に収めた形状をしています。配管の中に強制的にマイナス269度程度のヘリウムを流して冷やすことができるため、電流を流した時の超伝導状態の安定性が高く、また、強力な電磁力に耐えることができるという特長を持っています。
 超伝導導体の試験には、導体をマイナス269度程度まで冷却して、導体の周囲には最大で9万ガウスの磁界を作り、さらに、導体には数万アンペアの電流を流すことのできる設備が必要です。研究所の試験設備はその能力を備えていますが、LHDの超伝導ヘリカルコイルは、マイナス269度の液体ヘリウム中に浸して冷却する方式だったため、研究所の試験装置もそれに適した装置でした。そこで、JT-60SAで使用されるCIC導体を試験するために、超伝導ケーブルが収まったステンレスの配管の中に、圧力の高い極低温のヘリウム(液体でもなく気体でもないヘリウムの状態で、超臨界圧ヘリウムといいます)を強制的に長時間にわたって安定に流すことができるように、試験装置の改造を行いました。
 このようにして改造した試験装置の性能をまず調べて、CIC導体の試験が可能であることを確認しました。そして、実際にCIC導体の性能を調べる試験では、導体に流す電流値や導体の温度を変化させて、電気抵抗の無い超伝導状態が崩れ始める条件を調べました。この超伝導状態が崩れ始める基準は、導体1cm当たりに発生する電圧が100万分の1ボルトと極めて小さいため、とても精度の高い測定が要求されます。このような試験を行い、これまでにJT-60SAで使用される数種類のCIC導体の性能を詳しく調べることができました。その結果、開発されたすべての導体が、設計で要求される性能を満たしていることが分かりました。
 今後も引き続き、この試験装置を用いて、JT-60SAに限らず、核融合装置のための超伝導導体の開発・試験を行っていきます。


以上