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平成25年5月27日
高速カメラで見るLHDプラズマの神秘 −プラズマの画像計測−
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 大型ヘリカル装置(LHD)では、プラズマの様子を高速度撮影カメラ(高速カメラ)で監視・計測しています。市販のビデオカメラの撮影速度が1秒間に30枚の速さなのに比べて、高速カメラは1秒間に10万枚以上と桁違いの速さで撮影することができるため、プラズマの様子を詳しく観察できるだけではなく、その神秘的な映像から新しい現象を発見することもあります。最近ではテレビの科学番組などでも高速カメラによる撮影が利用され、一瞬だけ現れるような現象を時間的に引き延ばした映像でご覧になったことがあるかと思います。そして、水面にしずくを滴下させた際のミルククラウンや、ハチドリの羽の動きなどの高速カメラによる映像に、目を見張ったことがあるのではないでしょうか。今回は、高速カメラによって撮影したLHDプラズマの興味ある様子をいくつかご紹介します。

<1.飛び出すプラズマの塊>
 プラズマは磁場のカゴに閉じ込められていますが、周辺部の温度の低いプラズマの一部が、条件によってはこの磁場のカゴの隙間から外に出てくることがあります。この様子を高速カメラによって撮影したところ、プラズマが塊となって間欠的に外側へ飛び出す様子が観察されました。このプラズマの塊の持つエネルギーは小さいので、プラズマの閉じ込めに大きな影響を与えませんが、高速カメラによる画像計測を利用して、この興味ある現象の発生メカニズムの解明に取り組んでいます。

1.飛び出すプラズマの塊

<2.プラズマに小惑星探査機が突入?>
 プラズマ中の不純物の振る舞いを調べるために、不純物ペレットという直径数ミリメートル以下の鉄や炭素の小球を外部からプラズマの中へ、秒速数百メートルという高速で打ち込みます。この様子を高速カメラで撮影すると、プラズマ中に打ち込まれた不純物ペレットが溶けて、明るく輝いて消滅する様子が観測されました。これを見ると、小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰還して大気圏に突入した際に観測された光景を連想させます。高速カメラによって小球の不純物が溶ける場所と様子を詳しく計測することによって、不純物の発生位置を特定し、プラズマ中の不純物の振る舞いを詳しく解析しています。

2.プラズマに小惑星探査機が突入?

<3.プラズマの表面に流れ星を観測>
 真空容器の壁などで細かなちり(ダスト)が発生して、プラズマの周りを漂っていることがあります。高速カメラを用いて、このダストがプラズマの中に入り込んだ際に、溶けて光り輝く様子が観測されました。これはさながら、地球の周りの宇宙空間に漂っている細かなちりが、地球の引力で大気圏に突入した際に現れる流れ星のように見えます。通常、夜空に現れる流れ星は直線の筋を描いて消えますが、LHDのプラズマの表面で観測される流れ星は、大きなカーブを描いたり、2つに分かれてそれぞれが逆向きに移動したりと、さながらUFOのような動きをします。高速カメラによる画像計測を利用して、このプラズマ中のダストの不思議な動きを解明しています。

3.プラズマの表面に流れ星を観測

<4.竹輪の中に大蛇を発見>

 不純物ペレットなどによりプラズマ内部に不純物が大量に入り込むと、プラズマが冷やされて消滅してしまう場合があります。このプラズマが消滅する様子を高速カメラによって詳しく観測したところ、大量の不純物がプラズマの中心部に到達すると、中心部の温度が極端に低下してプラズマが中抜けの竹輪の様な形状になることが分かりました。その後、しばらくするとクネクネした蛇のような形の光の帯が現れて、竹輪の穴の中を回転しながら移動することも分かりました。なぜプラズマ中にこのような神秘的な形の光の帯が形成されるのか、物理学的に非常に興味深い現象であると考えて調べています。

4.竹輪の中に大蛇を発見
以上