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平成25年6月24日
ネットワークを利用した遠隔実験参加 −IT時代の共同実験−
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所

 核融合科学研究所は大学共同利用機関として、大型ヘリカル装置(LHD)をはじめとする実験装置や研究設備を用いた共同研究を、国内外の多くの大学や研究機関と実施しています。通常、所外の共同研究者は、LHD実験に参加する際は核融合研に来る必要がありますが、遠方の研究者がLHDを利用した共同研究をより積極的に進められるよう、最近は、遠隔でもデータ解析や実験参加が可能なように環境を整備しています。今回は、現在整備を進めている遠隔実験参加について紹介します。

 世界最大の超伝導装置であるLHDの実験には、北は北海道から南は九州・沖縄まで、数多くの大学の先生や大学院生が参加しています。研究機関も含めた平成22年度の実績では、その数は、84の大学・研究機関から664名もの研究者・大学院生にのぼります。また、アメリカやヨーロッパなど、海外から参加する研究者もいます。このような遠方にいる所外の研究者が、核融合研まで来て実験に参加し、データを解析するのは大変なことで、そのために共同研究の機会が制限されてしまうこともあります。
 そこで核融合研では、遠方の研究者がより活発に共同研究を進められるよう、ネットワークを利用して、進展が著しいIT技術を活用した遠隔実験参加の環境整備を進めています。例えば、インターネットを利用した実験参加のためのツールを提供しており、計測器によるデータ収集の条件設定や測定されたデータの解析は、遠方の研究室からWebブラウザ等を使って遠隔で行うことができます。また、共同実験を進める上では、研究者同士のコミュニケーションを密にすることが必要なため、TV会議システムも整備しています。これにより、海外の研究者とも実験の打合せからデータの解析まで、時差の問題はありますが、直接に顔の見える会議を行っています。
 遠隔実験参加の環境は、他の大学にある実験装置を用いた共同研究にも利用されています。現在、全国の大学や学術研究機関は、高速ネットワーク網として敷設・整備された学術情報ネットワークSINET4を活用して、共同研究等のために計算機シミュレーションや実験データ等の大規模なデータ転送を行っています。核融合研では共同研究の一環として、このネットワーク網を利用して、九州大学で行われている球状トカマク型装置QUESTの実験や筑波大学で行われているミラー型装置GAMMA-10の実験で得られたデータを、遠く離れた核融合研のデータ処理システムへ転送し、データの収集・保存、解析等が行えるシステムを提供しています。
 一方で昨今は、ネットワーク上のサーバへの不正侵入等の問題がマスコミを賑わせていますが、このような事態が生じないよう細心の注意を払い、管理を徹底しています。
 現在建設中の国際熱核融合実験炉(ITER)では、世界中の研究者が参加する大規模な遠隔実験が計画されています。このように、ネットワークを利用した遠隔実験は益々その重要性を増してゆくため、今後も、LHDの遠隔実験参加の環境整備の強化に努めていきます。

以上