精密診断で解明するプラズマの揺らぎと輸送
―CHD実験計画―

永岡賢一

 大型ヘリカル装置(LHD)の27年におよぶプラズマ実験では、1億度を超えるプラズマを実現し、超高温領域でのプラズマの性質を調べる実験とスーパーコンピューターを使ったシミュレーション研究の連携により大きな成果を上げてきました。その重要な成果のひとつは、プラズマの揺らぎが熱や粒子の輸送を通じてプラズマの温度分布や密度分布を決めるということでした。プラズマの揺らぎの発生と輸送現象の関係は、非常に複雑であることもわかりました。その一つは、ゾーナルフローと呼ばれる帯状の流れ構造が駆動されると、輸送が減少してプラズマが高温度になる現象です。これは、経済的な発電を実現するために必要な「閉じ込め改善」の代表例と理解されています。このほかにも、突発的な現象が大小さまざまな時空間スケールで発生し、プラズマの巨視的な性質に大きな影響を与えることが明らかになりました。これらは、予測が難しい非線形現象であり、その素過程を理解するためには、揺らぐ電磁場と相互作用する粒子の集団運動(位相空間ダイナミクス)を調べる必要があります。ポストLHD計画として2026年度から開始された『超高温プラズマの「ミクロ集団現象」を中核とした核融合科学の学術研究基盤計画』(略称:MCPoP)では、超高温プラズマを世界最高の分解能で計測する実験システムを構築し、位相空間ダイナミクスを含む超高温プラズマの詳細な振る舞いを捉えることで、揺らぎの発生メカニズムや、多様で複雑な輸送現象の解明に挑みます。

 そのMCPoPプロジェクトでは、2段階のプラズマ実験を計画しています。その第1フェーズは、コンパクトヘリカル装置(CHD)を用いたプラズマ実験です。LHDプラズマ実験の資産・知見を活かした高性能プラズマ計測システムの原理実証を行います。図1に高性能プラズマ計測システムの概略図を示します。LHDより出力が50倍以上大きなレーザーを用いたトムソン散乱計測では、電子の温度、密度、速度分布関数(位相空間構造)の高精度計測を行います。マイクロ波・ミリ波を用いて、密度揺らぎ、温度揺らぎ、磁場の揺らぎの計測を行います。重イオンビームプローブは、密度揺らぎ、流れ速度とその揺らぎを計測します。高速荷電交換分光では、イオン温度分布、速度分布、イオン速度分布関数の計測を行います。このほか、X線から赤外線領域における各種分光計測、磁気計測、静電プローブ等、さまざまな計測機器を準備します。これらの計測機器を統合した計測システムを構築し、プラズマ輸送現象を研究するための新しい実験プラットフォームを実現します。データサイエンス、シミュレーション研究とも連携した最先端の研究を国内外の共同研究として行う計画です。異分野との連携も科学の進展には重要であり、計測器などの機器開発研究等との連携も含めて研究を進めます。

図1.多様な輸送現象を解明する高性能プラズマ計測システムの概略図

 CHDは、2006年に運転を終了した小型ヘリカルシステム(CHS)の真空容器とコイルを使いますが、加熱装置を増強し、すべての計測機器を高性能なものに置き換えて、プラズマ実験の準備を進めています。2024年度から本格的な準備を開始し、2026年度内にプラズマ実験の開始を予定しています。図2に整備中のCHDを示します。古い計測機器を取り外し、新しい各種計測機器の取り付け準備に移行しています。

図2.コンパクトヘリカル装置(CHD)の全景

 CHDプラズマ実験での高性能プラズマ計測システムの実証後は、プラズマ実験の第2フェーズとして、磁場配位の柔軟性が極めて高い新装置CHD-Uを用いた実験により、磁場構造による揺らぎと輸送現象の制御を実証する研究に進みます。ミクロ集団現象の理解から制御への展開であり、磁場閉じ込め核融合プラズマの中心課題を解決する研究を展開します。どうぞご期待ください。

(メタ階層ダイナミクスユニット 教授)