吉田善章先生は任期満了により核融合科学研究所長を退任されます。吉田先生は多くの重要な改革を実行し、核融合科学の様々なテーマに挑戦する共同研究を幅広く受け止める大学共同利用機関としての研究所の体制を確立されました。4年間のご尽力に深く感謝申し上げます。
吉田先生が所長に就任された令和3年4月の時点では、研究所が大規模学術フロンティア促進事業として推進してきた大型ヘリカル装置(LHD)計画が令和4年度で終了することが決まっており、LHD計画終了後の研究体制の構築が緊急の課題でした。吉田先生は、学術界に広く議論を呼びかけ、これからの核融合科学が広い分野と協力して取り組むべき10個の学際的研究テーマを策定されました。この議論の場となったユニット構築会議は、毎回100〜200人の参加者を集めて39回も開催されました。このテーマのもとに集まる所内外の研究者によって共同研究チーム「ユニット」が編成され、核融合科学の様々な未解決問題に学際的に取り組む研究体制(ユニット体制)が構築されました。このユニット構築の過程は、ユニット準備室Webページで確認できます。議論の開始にあたって、吉田先生は楕円の二つの焦点を用いて核融合科学、ユニットテーマ、及び個人のテーマの関係を明快に説明され、ユニット構築の過程においても常に的確な指導・助言を行って、ユニット体制を構築されました。
さらに、吉田先生は、コミュニティの意見を広く取り入れて国内外の共同研究の企画・運営を行う共同研究運営委員会と国際連携運営委員会を新たに設置して共同研究体制の改革を行い、核融合科学分野の学際化と研究力の強化に努められるとともに、研究所の財政の立て直しに務められました。令和5年度以降、実施の目途が立たなくなっていたプラズマ実験研究について、LHDの研究計画を刷新し、学術研究基盤事業として実験実施の予算を獲得するとともに、文部科学省の学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想―ロードマップ2023―にプラズマ研究の計画「超高温プラズマの『ミクロ集団現象』と核融合科学」を復帰させ、求心力のある大型プロジェクトを継続して推進する道をつけられました。この他にも、産学官連携を強化するとともに、スタートアップを支援する体制を整備されました。
吉田先生が確立された研究所の体制を基盤として、核融合科学の大学共同利用機関である研究所を益々発展させることが我々の責務です。これまでの吉田先生の研究所へのご貢献に心より感謝申し上げます。
(核融合科学研究所 副所長)