NIFS

セミナー・談話会 研究教育改善室

2023.6.6 NIFS談話会

昨今の、新型コロナ感染症に伴う騒動、あるいはALPS処理水の海洋放出に関わる議論などを鑑みるに、専門家の見識と社会の理解との間に大きな乖離が生じているように思われます。京都大学学術出版会の鈴木哲也編集長をお招きして、先端研究の専門家は社会との乖離を埋めるために何をどのように発信するべきかという観点からご講演いただきます。ハイブリッドで開催します。ぜひご参加ください。

日時
10月11日(水) 13:50-16:30
場所
核融合科学研究所(管理福利棟4階第一会議室)/ Zoomハイブリッド開催
※オンライン参加される場合は下記URLにてZoom接続URLを取得してください。接続URLとパスコードが、電子メールにて配信されます。
https://us06web.zoom.us/webinar/register/WN_wd-VhXF_RlmNpJs7uWPeqg
講師
鈴木哲也
(京都大学学術出版会編集長)
講演タイトル
大きな問いを取り戻す―先端研究を専門外に伝え、「学術の物語」を紡ぐために
講演概要
専門知と社会の乖離を埋め、その関係を結び直すために何が必要か。鈴木(2022)では、学術研究の側に内在した問題として、①専門知のフロー化、②専門知のinvolution(内旋)、③「学術誌駆動型研究」の社会からの不可視化、の三つを指摘した。今回の講演では、その解決の方策として、Boyd(2009)などに依拠しながら、〈「学術の物語」の必要 〉について考えてみたい。
1924年にイギリスで刊行された『These Eventful Years: The twentieth century in the making as told by many of its makers』という大著には、そのわずか5年前に終息した「スペイン風邪」について1行も記されていない。社会の集合的記憶の生成には「物語」が不可欠だが「スペイン風邪」には「物語」が欠けていたのがその要因だという(Hershberger 2020)。この観点で見たとき、専門知と社会を結び直すには、学術研究が社会を動かす「物語」を語るべきなのではないか、という問題意識に至る。しかし現実はどうか、そしてどのように語ることが必要なのか。
学術コミュニケーションに携わる演者の実践的経験をもとに、研究者が「業界内」の問いに閉じこもることなく、「大きな問い」を取り戻して社会に語ることの重要性とその方策について、とりわけ先端的な研究を営む自然科学系の方々と一緒に考えてみたい。
文献
  • Boyd, B(2009)"On the origin of stories : evolution, cognition, and fiction", Belknap Press of Harvard University Press.
  • Hershberger, S(2020)"The 1918 flu faded in our collective memory: We might ‘forget’ the coronavirus, too", Scientific American, 323 (5).
  • 鈴木哲也(2022)「運動としての専門知―対話型専門知と2061年の子どもたちのために」村上陽一郎編『「専門家」とは誰か』晶文社:231-260頁。
講師略歴
京都大学学術出版会専務理事・編集長。京都大学文学部および教育学部に学ぶ。出版社勤務を経て2006年より現職。著書に、『学術書を読む』、『学術書を書く』(高瀬桃子との共著)、『世界大学ランキングと知の序列化』(分担執筆)(以上、京都大学学術出版会)、『京都の「戦争遺跡」をめぐる』(池田一郎との共著)(地方・小出版流通センター、新装版:つむぎ出版)など。
使用言語
講演:日本語、講演資料:日本語
タイムテーブル
13:50-14:00 あいさつ、講演者紹介
14:00-15:30 講演
15:30-16:30 質疑応答
お問い合わせ

核融合科学研究所 学術企画委員会 担当 後藤基志
nifs-meeting[@]nifs.ac.jp(送信時は[ ]を外してください)