重水素と三重水素が核融合反応を起こすと、高速の中性子とヘリウム原子核が発生します。中性子はプラズマから飛び出し、プラズマを完全に覆う「ブランケット(毛布の意味)」と呼ばれる壁にぶつかります。中性子は減速し、その運動エネルギーが熱エネルギーに変換され、ブランケットの温度を上げます。ブランケットの温度は設計によりますが、350℃から900℃にまで上昇します。
ブランケット内には冷却材が流れ、外部の蒸気発生器へ熱エネルギーが輸送されます。冷却材としては、加圧水、ヘリウムガス、リチウム鉛合金(液体)、リチウム化合物(液体)などが候補として挙げられています。その後、蒸気発生器を介して蒸気タービンを回す仕組みは、火力発電や原子力発電と同様です。
核融合炉の燃料は重水素(D)と三重水素(T)ですが、三重水素は自然界での存在比率が極めて低いため、何らかの方法で生産する必要があります(重水素は豊富に存在します)。核融合炉では、核融合反応で発生した中性子をリチウム(Li)に当てることで核反応を起こし、三重水素を生成します。この役割を担うのがブランケットです。
ブランケットにはリチウムが全面に充填されており、中性子と確実に衝突させることで三重水素を効率よく生産します。したがって、ブランケットは 「冷却材による熱の取り出し」 と 「三重水素の生産」 という二つの重要な役割を担っています。
リチウム(Li)をペレット状にしてブランケット内部に充填するタイプでは、ペレットの隙間にヘリウム(He)を流し、発生した三重水素(T)と混合した状態で外部へ取り出します。取り出したガスから三重水素(T)を分離し、外部から供給された重水素(D)と混合してプラズマに注入します。
一方、プラズマの周辺部では、真空ポンプによって常に排気が行われており、重水素(D)、三重水素(T)、および反応によって生成されたヘリウム(He)の混合ガスが除去されます。この混合ガスからヘリウム(He)を分離し、残った重水素(D)と三重水素(T)を燃料として再びプラズマに注入します。