NIFS

所長あいさつGreetings from the Director General

所長 吉田 善章

 核融合科学研究所(NIFS)は新しい時代に向かっています。新生NIFSが、学術の潮流の中で核融合科学の新たな方向を照らす灯台となるように、所員の力を結集して取り組む所存です。
 核融合科学は多くの難題の複合体です。核融合エネルギー実現への道程は研究の出発点(20世紀中葉)では予想できなかった苦難の連続でした。しかし、予期せぬ難問に遭遇するということは、必ずしも不幸なことではありません。多くの偉大な研究者が「失敗から発見が生まれた」と証言しているように、人知を超えた真理は予想外のところにあるからです。核融合は、開発研究者にとって険しい峰であると同時に、学術研究者にとっては宝の山だということができます。難問をインプットとして、全く新しい知をアウトプットすることこそ学術研究の役割です。
 ただし、核融合に立ち向かうためには、まず「難問」を「良い問題」として定式化する必要があります。「良い問題」とは、それを研究することから大きな一般性をもつ真理が導かれるような研究課題という意味です。
 これまでの核融合研究では、プラズマのパラメータ(温度や密度)を核燃焼条件に近づけるという「数値目標」を課題とし、文字どおり人類未踏の「フロンティア」を開拓する大規模事業を推進してきました。その挑戦を通じて、数値という「結果」の背景にある「原因」を構成する問題群がみえてきました。核融合科学がより広いテーマに展開され、学術的な意味が読み取れる段階へ進んだといえます。NIFSは世界に先駆けて、核融合科学を「良い問題」の集合として展開し、それらをテーマとして掲げる学術研究機関へと進化します。
 大型ヘリカル装置(LHD)は世界に例のない実験装置であり、これを用いて初めて発見された多くの現象があります。それを「装置」の特殊性(特長)に還元してしまうのではなく、複雑現象の諸相において普遍的に成り立つ原理として一般化することこそが学術研究の目標です。一般化とは、様々な対象において実現できる「遺伝情報」にするという意味です。将来の核融合炉(さらには様々な未来の科学技術)の設計図=DNAを構成する「遺伝子」として拡散させなくてはなりません。LHDプロジェクトの最後のフェイズは、post LHDの時代へ引き継ぐべき「一般化された情報」の生成に集中します。
 NIFSは新しい時代に向けて「ユニット」と「プラットフォーム(学術研究基盤)」を二つの柱とする組織へ抜本的な転換を行います。

〇「ユニット」は学術研究の組織単位であり、それぞれのユニットが掲げる「ユニットテーマ」は、今後10年の未来を見据えて、私たちが自ら定義する核融合科学のテーマを表現するものになります。概ね10のユニットを編成します。単なる「数値目標」の時代をこえた、新しい時代の研究目標=ユニットテーマがこれからのNIFSのアイデンティティとなります。

〇「プラットフォーム」はハード面の基盤です。post LHDの時代に、核融合科学分野の大学共同利用機関としてNIFSが備えるべき学術基盤とは何か、LHDの資産を最大限に未来に活かす方法は何か、そしてNIFSの次世代プロジェクトはいかにあるべきか、これらの戦略を多角的に検討します。

NIFSは、できるだけ多くの研究者が共同研究を行う大きな街道となり、学術の広い地平のなかで「核融合科学」のスコープを拡大していくことを目指します。ぜひNIFSの改革に関心の目を向け、積極的に関与していただくことをお願いします。

令和3年4月