核融合科学研究所

NIFSについて

核融合について研究所概要

核融合とは、質量の小さい原子核同士が融合して、別の重い原子核に変わるとともに、とても大きなエネルギーを発生する反応です。これは、核融合反応が起きる前の質量より、反応後の質量がわずかに小さくなり、その差に相当する質量がエネルギー(E = mc2)に変わるからです。この核融合反応は宇宙における普遍的なエネルギーの源であり、太陽などの恒星の内部では4つの水素からヘリウムが生成される核融合反応が起きていて、50億年以上にわたりエネルギーを生成し続けています。

宇宙の普遍的なエネルギーを私たちの生活を支えるエネルギー源として利用するために、核融合炉の実現を目指した研究が進められています。地上で核融合反応を実現するためには、水素の同位体である重水素と三重水素を燃料として利用することが考えられています。重水素と、三重水素を作るために必要なリチウムは海水中にも含まれており、とても少ない量で大きなエネルギーを生成することが可能です。人類は、これまで、石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料をエネルギー源として、現在の高度な科学技術産業社会を作り上げてきました。しかしながら、化石燃料の消費は大量の二酸化炭素や窒素酸化物を生み出して地球環境に深刻な影響を与えており、その埋蔵量にも限りがあります。環境負荷の少ないエネルギー源を手に入れることは、世界共通の最重要課題であり、核融合エネルギーはその解決策となる大きな可能性を秘めています。

核融合反応を起こすためには、重水素と三重水素の原子核(イオン)を近づける必要がありますが、原子核は正の電荷を持っているため、互いに反発力が働きます。この反発力に打ち勝って原子核どうしを近づけるためには、秒速1000 km以上の速度で衝突させることが必要です。また、原子核の速度が速いだけでは、原子核が逃げてエネルギーが損失してしまうので、高速で運動する原子核を一定の空間に閉じ込めておくことも必要になりますし、衝突の回数を増やして多くの核融合エネルギーを得るためには原子核の密度を上げることも必要になります。このように、高速で運動する原子核を、一定の空間にたくさん閉じ込めることが核融合反応を起こすための条件になります。また、このような状態を、高温のプラズマ状態と呼びます。

太陽は自らの巨大な重力でプラズマを閉じ込めていますが、地上では磁場を用います。プラズマを構成する原子核や電子といった荷電粒子が磁場から力を受けて、磁力線に巻き付くように運動をする性質を用いて、高温のプラズマを閉じ込めます。プラズマに生起する様々な複雑現象を理解しようとするプラズマの研究は、核融合炉の実現に向けた開発研究にとって核心的な重要性を持つとともに、学術研究にとって多くの研究課題を提供しており、宇宙・天体現象を理解するための基礎として重要な役割を担っています。