プラズマ中の波動伝播とモード変換

電波は人間社会の情報通信に欠かせないものですが、電子レンジのように物質を加熱するためにも使われています。「物質の第４の状態」と言われるプラズマも電波によって加熱することができます。核融合反応が起こる高温状態を作り出すためにはプラズマを加熱することが必須であるため、電波を用いた加熱手法の研究は重要であると言えます。

プラズマ中を進む電波はある条件で電子あるいはイオンと強く相互作用し、これらの粒子の運動エネルギーを増大させ自身は減衰します（この現象を「共鳴加熱」と言います）。また、プラズマの中では電波は複雑な伝わり方をします。温度や密度によって屈折(曲がる)・反射(跳ね返る)・散乱(散らばる)・回折(回り込む)の特性が異なり、さらにはモード変換と言って、横波が縦波になったり、別の周波数の波を立ててしまったり、ということも起こります。

私はプラズマの中での波の複雑な伝わり方やモード変換の過程を考慮しながら、共鳴加熱が起こる領域までいかに効率良く加熱のための大電力の電波を送り届けるか、ということを、数値シミュレーションと実験の両面から研究しています。

伊神 弘恵
研究部・メタ階層ダイナミクスユニット・准教授

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