セミナー・談話会研究教育改善室
Fusion Science Seminar
Fusion Science Seminar第3回Fusion Science Seminarでは、兵頭俊夫先生をお招きし「大型施設における固体物理・原子分子物理実験〜KEK物構研低速陽電子実験施設を例に〜」と題した講演会と、物理教育に関する自由討論会を開催いたします。是非ご参加ください。
- 日時
- 2月1日(木) 15:30-17:00
- 場所
- 核融合科学研究所 管理・福利棟4階 第一会議室 / Zoom(ハイブリッド開催)
- 講師
- 兵頭 俊夫
高エネルギー加速器研究機構 - 講演タイトル
- 大型施設における固体物理・原子分子物理実験〜KEK物構研低速陽電子実験施設を例に〜
- 講演概要
中性子やミュオンのように、最初から原子炉や加速器の利用が前提となる量子ビームに比べると、陽電子はアイソトープを線源とする実験から始まっており、原子炉や加速器を利用する線源の歴史は比較的浅い。実験室のX線発生装置や、気体放電管からの真空紫外線の利用からシンクロトロン放射光に至ったX線実験の発展に、陽電子ビーム利用実験の発展は類似している。 KEK物構研 低速陽電子実験施設(Slow Positron Facility, SPF)では、電子リニアックで50MeVまで加速した電子をTaターゲットに当てて電子・陽電子対生成から生じた陽電子を利用する。得られる高エネルギーの陽電子を、Wが陽電子に対して負の仕事関数をもっているという性質を利用した特殊な方法で効率よく低速化して、物性・原子分子研究に利用する。
本セミナーでは、SPFの施設概要と、陽電子回折、特に全反射高速陽電子回折(TRHEPD)を取り上げて、その理論的基礎と、実験技術、および主な成果を紹介する。TRHEPDは物質の表面構造(原子配列)を調べる画期的手法である。反射高速電子回折(RHEED)の陽電子版であるが、物質はすべて内部の静電ポテンシャルが正であるため、入射の視射角が臨界角より小さい場合、陽電子は表面から全反射され、回折データは最表面のみの情報を与える。視射角が臨界角より大きいと試料内に侵入するが表面に近づく向きに屈折するので、離れる向きに屈折する電子に比べて、最表面やその直下のより詳細な情報を得ることができる。
低速電子回折(LEED)の陽電子版である低速陽電子回折(LEPD)の装置の開発も進んでいるので、それも紹介する。また、TRHEPDの解析で使われている、データ駆動科学の協力で開発された表面データ解析プラットホームである2DMATの利用についても紹介する。また、兵頭氏は日本物理学会などを通じて、長年にわたり物理教育に取り組んでこられました。俯瞰的記事として[5]があります。また、学部1年生むけ力学教科書として著名な「考える力学」[6]の著者でもあり、物理学にもとづく伝統玩具の改良[7]などにも取り組んでいらっしゃいます。本セミナー翌日の討論会では、兵頭氏にこれまでの教育についての活動をご紹介いただき、今後の物理教育のあり方について、自由に討論いたします。
- 関連文献
- [1] Y. Fukaya, A. Kawasuso, A. Ichimiya and T. Hyodo, "Total-reflection high-energy positron diffraction (TRHEPD) for structure determination of the topmost- and immediate sub-surface atomic layers" J. Phys. D: Appl. Phys. 52, 013002-1-19 (2019). https://doi.org/10.1088/1361-6463/aadf14
[2] 兵頭俊夫,「全反射陽電子回折(TRHEPD)による表面構造解析」固体物理 53, 705 (2018年11月号 p141).
[3] Y. Motoyama, K. Yoshimi, I. Mochizuki, H. Iwamoto, H. Ichinose, T. Hoshi, "Data-analysis software framework 2DMAT and its application to experimental measurements for two-dimensional material structures", Comput. Phys. Commun. 280, 108465 (2022). https://doi.org/10.1016/j.cpc.2022.108465
[4] 関係論文一覧、https://www2.kek.jp/imss/spf/research/publications.html
[5] 兵頭俊夫、平成の理科教育・物理教育と日本物理学会,日本物理学会誌,2019年74巻5号 p. 292-293; https://doi.org/10.11316/butsuri.74.5_292
[6] 兵頭俊夫、考える力学(第2版),学術図書出版社, 2021年.
[7] 田村健治, 阿部房次, 吉田寿恵, 塚原清伸, 山本貞美, 和田健, 兵頭俊夫,力学的考察に基づいた「入門用ちょんかけごま」の開発,物理教育,2023 年 71 巻 1 号 p. 8-12; https://doi.org/10.20653/pesj.71.1_8 - 講師略歴
- 昭和46年 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程修了。理学博士(東京大学)。東京大学教授・高エネルギー加速器研究機構特別教授・同ダイヤモンドフェロー・日本物理学会会長・日本陽電子科学会会長などを歴任。
- 講師Webページ
- https://www2.kek.jp/imss/spf/
- タイムテーブル
-
2月1日
15:30-17:00 Fusion Science Seminar 17:30 懇親会
核融合研、3000円前後
要:事前申し込み10:00-11:30 併設会議:物理教育討論会
会場:研究Ⅰ期棟4階402号室 / Zoom(ハイブリッド開催) - 使用言語
- 講演:日本語、講演資料:日本語
- 参加費
- 無料
- 講演資料
お問い合わせ
主催:核融合科学研究所
核融合科学研究所 学術企画委員会 担当 加藤太治
E-Mail: nifs-meeting[@]nifs.ac.jp(送信時は[ ]を外してください)