NIFS

第23サイクルのプラズマ実験を開始しました

2021.10.14
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

 本日、核融合科学研究所は、大型ヘリカル装置(LHD)の第23サイクルのプラズマ実験を開始しました。「サイクル」とは、数か月間連続してプラズマ実験を行う期間のことで、今回は、平成10年の実験開始から数えて、23回目の実験期間になります。LHDでは、第19サイクルから、重水素を用いて高温のプラズマを生成する「重水素実験」を行っています。昨年度の第22サイクルプラズマ実験における重水素実験で、イオン温度と電子温度が共に1 億度を超える高温度プラズマの実現に成功するとともに、将来の核融合発電の燃料である「重水素」と「三重水素」を、「重水素」と「軽水素」によって模擬した実験により、水素同位体が混ざりあう核融合発電にとって好ましい状態が乱流によってもたらされることを世界で初めて観測するなど、今後の核融合研究の基盤となる成果を挙げることができました。
 LHDでは、重水素実験の実施により、核融合発電に必要な1億度を超える高温プラズマの生成技術を確立したことで、研究は新たな段階に入りました。これからは、このような高温プラズマの安定維持に必要な乱流や不安定性の制御、プラズマ中に発生する波の発生メカニズムを明らかにする等の核融合発電を実現する上で必要な学術研究を中心に進めます。さらに、核融合研究で得られた知見を天体現象などの理解のために普遍化する新たな研究の展開も図る予定です。
 第23サイクルの実験期間は、本日10月14日から来年の2月17日までを予定しています。重水素実験は、本日から1月21日まで実施します。その後、終盤の約1 か月間は、軽水素とヘリウムガスを用いた実験を実施し、2月17日に終了する予定です。
 本実験サイクルにおいても、実験の安全性を最優先事項として、機器の保守点検、安全講習会、巡視等の実施、及び万が一の事故に備えた緊急連絡・対応の訓練を実施するとともに、24時間体制で監視を行っていきます。また、放射線関連データや実験の進行状況を随時ホームページ上で公開する等、引き続き情報公開に努めてまいります。今後とも ご支援、ご協力の程よろしくお願い申し上げます。

以上

*水素同位体:水素の仲間の元素のこと。質量数が1、2、3の水素を、それぞれ「軽水素」、「重水素」、「三重水素」と呼びます。将来の核融合発電では、「重水素」と「三重水素」を用いる予定ですが、LHDのプラズマ実験では「重水素」と「軽水素」を用います。