第24サイクルのプラズマ実験が終了しました
2023.1.10核融合科学研究所
大型ヘリカル装置(LHD)の第24サイクルのプラズマ実験が、12月27日に終了しました。「サイクル」とは、数か月間連続してプラズマ実験を行う期間のことです。1998年の実験開始以来、今回で24回目の実験期間となる第24サイクルのプラズマ実験は、9月29日に開始し、延べ53日間にわたり、8,000回を超えるプラズマの生成を行いました。この間、国内外の大学・研究機関からの多くの共同研究者とともに様々な研究を進め、実験最終日を迎えました。今年度も新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの共同研究者が来所できない中、実験の一部をリモートで実施しました。リモート実験は、海外の研究者にとっては手軽に参加できるため、実験提案者の3分の1は海外からでした。
このような状況の中、今サイクルの実験でも多くの成果が得られました。2017年に開始した重水素ガスを用いた実験(重水素実験)も、今回の第24サイクルが最後となりました。重水素とは、通常の水素(軽水素)の2倍の質量を持つ同位体です。今年度は、軽水素プラズマ、重水素プラズマ、重水素と軽水素の混合プラズマの実験を行いました。将来の核融合炉では、重水素と三重水素の混合プラズマが用いられます。LHDでは、重水素実験開始以降、重水素と軽水素の混合プラズマの実験において、将来の核融合炉のプラズマを模擬した実験を行ってきました。
核融合炉では、核融合反応で生じる高エネルギーヘリウム粒子によってプラズマが加熱されます。このようなプラズマの挙動を理解することは、核融合発電を実現するために極めて重要です。LHDでは、重水素実験で得られた高性能プラズマ中に、(核融合反応による発生を模擬した)高エネルギー粒子を入射することが可能です。今サイクルの実験では、米国の核融合スタートアップ企業であるTAE テクノロジー社と先進的核融合燃料を用いた核融合研究を共同で行いました。この実験もオンラインで行われました。
核融合炉のプラズマを加熱した後のヘリウムは、最終的には炉の外に排出されなければなりません。今年度は、これを模擬するため、LHDに高エネルギーのヘリウムをビームでプラズマ中に入射し、そのヘリウムがプラズマ内部でどのように移動し、プラズマの外に出てくるかを調べる実験を行いました。
プラズマの乱れ(乱流)や不安定性に関する実験も行いました。これらの研究は、将来の核融合プラズマの制御法を開発する上で重要な知見を与えてくれます。乱流や突発的な不安定性は、核融合プラズマだけでなく、宇宙や地球の磁気圏で起こる様々な現象に深く関わっており、分野を越えて学際的な研究にも大きな進展がありました。研究成果の一部は、すでに12月23日にプレスリリースを行い、いくつかの新聞に記事として取り上げられています。
今後、LHDの実験中にマイナス270度に冷却していた超伝導コイルが室温に戻るのを待ってから、1月下旬より、来年度以降の軽水素等を用いた実験に向けた保守点検作業、機器のアップグレード等の作業を開始します。