第25サイクルのプラズマ実験が終了しました
2024.8.21
核融合科学研究所
2023年度から新たに立ち上げた『学術研究基盤LHD計画』としての最初のプラズマ実験期間が、2024年6月20日に終了しました。大型ヘリカル装置計画(LHD)の実験開始以来、通算で25回目の実験期間(第25サイクル)となる今回のプラズマ実験は、2024年3月13日に開始し、延べ55日間で、計6,335回のプラズマの生成を行いました。実験期間に先立って国内外の大学・研究機関の共同研究者から募集した165件の実験提案をベースに実験スケジュールを策定し、様々なプラズマ実験を実施しました。
大規模学術フロンティア促進事業としてのLHDプロジェクトは2022年度をもって終了し、2023年度からの3年間は、高精細計測装置や多彩な加熱装置など、これまでのLHDプロジェクトの資産を学術研究基盤として活用するため、文部科学省の学術研究基盤事業※として運用しています。なお、2017年から実施してきた重水素を用いたプラズマ実験は2022年度で終了しており、学術研究基盤LHDでは通常の水素(軽水素)等を用いた実験を行います。したがって、今回の実験サイクル以降は新たな中性子やトリチウムの発生は無くなりました。
学術研究基盤LHD計画ではオープンサイエンスを進めています。世界中の誰でも、インターネットを通してLHDデータリポジトリにアクセスすることが可能であり、今回の実験ではオンライン会議システムも併用して、国内外問わず多くの共同研究者とデータを共有しながら実験を進めました。このようなことから、多くの海外の研究者がLHD実験に遠隔参加可能であり、第25サイクルにおける実験提案のおおよそ3分の1は海外の研究者から提案されたものです。LHD実験に関わる研究成果は、Webページを通して広く紹介しています。学術論文誌に掲載された研究成果の要点をわかりやすく説明しているので、ご覧ください。
実験終了後、マイナス270℃まで冷却していた超伝導コイルの温度をおおよそ3週間かけて室温まで戻し、7月下旬にプラズマ真空容器を開放して、装置の保守点検作業を開始しています。LHDの最後の実験サイクルとなる次回のプラズマ実験は、2025年秋から年末にかけて実施する予定です。
※ 学術研究基盤LHDでは、超高温プラズマを安定に生成できるLHDにおいて、多様な高精細計測装置を用いてプラズマの内部構造を計ることによって、核融合に限らず宇宙・天体プラズマにも共通する様々な複雑現象の原理に迫る国際共同研究を実施します。学術研究基盤LHDはオープンデータを旨とし、多くの他分野の研究者を巻き込んで、核融合科学の異分野融合を推進するための研究基盤を整備します。