核融合科学研究所

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2024.4.18

核融合科学研究所フュージョンエネルギー産学連携研究室に
「HF共同研究グループ」を設立

研究成果(プレスリリース)

概要

大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 核融合科学研究所(所長:吉田善章、以下「核融合科学研究所」)は、株式会社Helical Fusion(代表取締役:田口昂哉、以下「HF社」)と、ヘリカル型核融合炉※1の実用化に向けた研究開発を行う産学官連携研究部門「HF共同研究グループ」を令和6年3月1日に核融合科学研究所フュージョンエネルギー産学連携研究室に設置しました。

設立の背景と目的

核融合科学研究所は、大学共同利用機関法人自然科学研究機構の一員として、核融合プラズマに関する学理とその応用研究を推進しています。核融合は、環境に優しい新しいエネルギー源として期待されており、その実現に向けて大学や研究機関と連携した研究活動を展開しています。このたび、核融合科学研究所はHF社と協力し、ヘリカル型核融合炉の実用化に向けた研究開発を行う産学官連携研究部門「HF共同研究グループ」を設置しました。この共同研究グループは、核融合科学研究所の専門知識とリソースを結集し、HF社とともに、ヘリカル型核融合炉の実現に向けた研究開発の進展を目指します。核融合科学研究所は世界最高水準の研究活動を通じて核融合科学の進展に寄与し、広く科学技術の基盤形成に貢献することを目指しています。この共同研究の成果が持続可能なエネルギーの実現に向けた一歩となることを期待しています。

研究内容

HF共同研究グループでは、ヘリカル型核融合炉の実用化に向けた研究開発を推進します。特に、高温超伝導(HTS)導体※2とこれを用いたマグネットに関して、重点的に研究を進めます。HTS導体は、従来の低温超伝導導体と比較してより高い温度、より高い磁場中で超伝導状態を示す特性を有しており、ヘリカル型核融合炉用のマグネットに要求される特性に合致しているため、HTS導体の設計・製作・試験を実施して、ヘリカルコイルへの適用可能性を探求します。

HF共同研究グループ設立に先立って実施された共同研究において、HF社が製作したHTS導体の試験サンプルを用いた特性実験が行われました。この実験は、世界でも有数の「大型導体試験装置」を所有する核融合科学研究所の超伝導マグネット研究棟において実施されました。試験サンプルは、摂氏マイナス253度(絶対温度20ケルビン)の極低温かつ8テスラの強磁場環境下において19キロアンペアまでの通電試験を行いました。今後、HTS導体の研究にとどまらず、「ヘリカル型核融合炉の実用化に向けた研究開発」として幅広い共同研究を積極的に実施していきます。

特記事項

名称 HF共同研究グループ
設置目的、研究目的 ヘリカル型核融合炉の実用化に向けた研究開発を行う。特に高温超伝導マグネットに関する実験などに関して重点的に研究を行う。
設置期間 令和6年3月1日~令和7年3月31日
設置機関名 核融合科学研究所
設置場所 核融合科学研究所 計測実験棟大実験室
及び 研究II期棟1階118号室
民間機関等側研究代表者 株式会社 Helical Fusion 代表取締役・宮澤順一
機構側研究代表者 核融合科学研究所 教授・柳 長門

【用語解説】

※1  ヘリカル型核融合炉
核融合反応に必要な高温のプラズマを強力な磁場を用いて閉じ込める方式の核融合炉です。らせん(ヘリカル)形状にねじれたコイルに大きな電流を流すことで、プラズマを閉じ込めるために必要な磁場を作り出します。この方式は日本で発明され、核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)でも採用されており、1億度のプラズマの閉じ込めが実証されています。ヘリカル型核融合炉の特徴は、プラズマを外部のコイルで作られた磁場だけで安定に長時間閉じ込めることができる点です。これは、定常的に稼働する核融合発電炉を実現させるために極めて重要です。ヘリカル型核融合炉を実現するためには巨大な3次元ヘリカルコイルの製作をはじめ、多くの技術課題があります。これらをひとつひとつ解決していくことが、核融合エネルギーの実用化につながります。

※2  高温超伝導(HTS)導体
ある一定の温度以下に冷却されると電気抵抗がゼロになり、電流がほぼ永久に流れ続ける現象のことを超伝導現象と呼びます。「高温超伝導体」とは、従来、液体ヘリウム(摂氏マイナス269度、絶対温度4.2ケルビン)で冷却することによって用いられてきた金属系の「低温超伝導体」よりも高い温度で超伝導現象を示す銅酸化物系物質を指します。これを用いて大電流を流す「導体」を製作すると、供給不安のあるヘリウム消費の少ないコイルを実現することができるとともに、従来よりも高い磁場を発生できるメリットがあります。これにより、経済的な核融合炉の実現が期待されます。現在、高温超伝導は核融合炉への適用の他、送電ケーブルや病院の磁気共鳴診断装置(MRI)、変圧器や発電機、モータなどへの適用に開発が進展しています。

【本件のお問い合わせ先】
  • 大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 核融合科学研究所
    核融合科学学際連携センター 産学官連携部門
    E-mail:
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