NIFS

第23サイクルのプラズマ実験が終了しました

2022.2.28
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構
核融合科学研究所
 

大型ヘリカル装置(LHD)の第23サイクルのプラズマ実験が、2月17日に終了しました。「サイクル」とは、数か月間連続してプラズマ実験を行う期間のことです。1998年の実験開始以来、今回で23回目の実験期間となる第23サイクルのプラズマ実験は、10月14日に開始し、延べ61日間にわたり、9,200回を超えるプラズマの生成を行いました。この間、国内外の大学・研究機関からの多くの共同研究者とともに様々な研究を進め、予定どおり今サイクルのプラズマ実験を終了しました。 今年度も新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの共同研究者が来所できない中、実験の一部をリモートで実施しました。リモート実験は、海外の研究者にとっては手軽に参加できるため、実験提案者の3分の1は海外からでした。 

このような状況の中、今サイクルの実験でも多くの成果が得られました。2017年に開始した重水素ガスを用いた実験(重水素実験)も、今回(第23サイクル)で5回目となります。重水素とは、通常の水素(軽水素)の2倍の質量を持つ同位体です。今年度は、軽水素プラズマ、重水素プラズマ、重水素と軽水素の混合プラズマの実験を行いました。将来の核融合炉では、重水素と三重水素の混合プラズマが用いられます。LHDでは、重水素実験開始以降、重水素と軽水素の混合プラズマの実験において、将来の核融合炉のプラズマを模擬した実験を行っています。

核融合炉では、核融合反応で生じる高エネルギーヘリウム粒子によってプラズマが加熱されます。このようなプラズマの挙動を理解することは、核融合発電を実現するために極めて重要です。LHDでは、重水素実験で得られた高性能プラズマ中に、(核融合反応による発生を模擬した)高エネルギー粒子を入射することが可能です。今サイクルの実験では、米国の核融合スタートアップ企業であるTAE テクノロジー社と先進的核融合燃料を用いた核融合研究を共同で行いました。この実験もオンラインで行われました。

核融合炉のプラズマを加熱した後のヘリウムは、最終的には炉の外に排出されなければなりません。今年度は、これを模擬するため、LHDに高エネルギーのヘリウムをビームでプラズマ中に入射し、そのヘリウムがプラズマ内部でどのように移動し、プラズマの外に出てくるかを調べる実験を行いました。

プラズマの乱れ(乱流)や不安定性に関する実験も行いました。これらの研究は、将来の核融合プラズマの制御法を開発する上で重要な知見を与えてくれます。乱流や突発的な不安定性は、核融合プラズマだけでなく、宇宙や地球の磁気圏で起こる様々な現象に深く関わっており、分野を越えて学際的な研究にも大きな進展がありました。 
研究成果の一部は、すでに2021年11月5日2022年1月17日2月18日にプレスリリースを行い、いくつかの新聞に記事として取り上げられていますが、詳細は、来年度早々に開催される「プロジェクト研究成果報告会」で発表する予定です。

今後、LHDの実験中にマイナス270度に冷却していた超伝導コイルが室温に戻るのを待ってから、3月下旬より、来年度の実験に向けた保守点検作業、機器のアップグレード等の作業を開始します。