核融合科学研究所

おしらせ

2025.6.20

核融合発電実現に向けて日英両政府が覚書を締結、
日英共同研究の更なる進展が期待

日英両政府は次世代エネルギーとして期待される核融合発電の技術開発で協力する覚書を6月19日に交わしました。核融合科学研究所では、日英の共同研究として、LIBRTI(Lithium Breeding Tritium Innovation)プログラムが進められています。

本プログラムは、イギリス原子力公社(UKAEA)が主導するフュージョンエネルギー開発の取り組みであり、今後実用化が期待されるフュージョンエネルギーに不可欠な燃料である三重水素(トリチウム)の持続的な生産技術の確立を目指しています。今回の日英両政府間での覚書の締結を契機に、本共同研究プログラムの更なる進展が期待されます。

フュージョンエネルギーでは、プラズマの周囲にリチウムを含むブランケット(増殖ブランケット)を配置し、そこで中性子とリチウムの反応によって燃料を効率的に増殖させることが不可欠です。また、このブランケットは熱の回収や放射線遮蔽の役割も果たします。

総額2億ポンド(約390億円)規模のLIBRTIプログラムでは、4年の実施期間で制御された燃料生産の実証を目標としています。本プログラムの一環として、2027年に14MeVの中性子源を導入し、世界初の試験施設をオックスフォードシャーのUKAEAカラムキャンパスに建設することが計画されています。この中性子源は、実際の装置で発生する中性子と同じエネルギーを持つものであり、多様なブランケットの工学試験が可能となります。

また、LIBRTIプログラムでは、12件の小規模なブランケット増殖試験およびデジタルシミュレーション実験に研究資金を提供しています。その一つが、ランカスター大学が主導するTriBreed(Tritium Breeder)プロジェクトです。TriBreedは、オックスフォード大学や核融合科学研究所の研究者が、スタートアップ企業の京都フュージョニアリング社と協力し、セラミック増殖ブランケットの模擬装置を設計・製作し、照射試験を行います。このプロジェクトでは、先進的なオクタリチウムセラミック増殖材を用い、ブランケット設計で実際にどの程度の燃料が生産されるかを正確に予測し、その増殖性能を実証することを目指しています。

LIBRTIプログラムの詳細については、UKAEAの公式発表(英語)をご覧ください。