2026.3.19
労働安全衛生に関する情報交換会(第21回)を開催
核融合科学研究所は令和8年2月5日と6日、「労働安全衛生に関する情報交換会」を開催しました。この会合は労働安全衛生法に基づく各機関の取組や活動状況及び課題等の情報交換を目的として、法人化後の平成16年度から毎年実施しており、今回で21回目となります。全国の大学、大学共同利用機関等21機関から安全衛生に関わる技術職員を中心に事務職員、研究教育職員、大学等環境安全協議会評議員からなる約40名が参加しました。
開催にあたり長壁正樹安全衛生推進センター長からの「毎年参加いただきありがとうございます。皆さんの貴重な経験をまたお聞かせ願いたい」との挨拶に続いて各機関から、大学における安全衛生教育、防火防災対策訓練、薬品管理、化学物質等のリスクアセスメント、事故発生時の対応と防止対策等に関する13件の発表がありました。
冒頭のセッションでは長壁センター長による基調講演があり、重水素実験開始にまつわる経験談が披露されました。核融合研究に関する初歩と重水素実験の学術的意義についての解説に始まり、重水素実験開始に向けて地域住民との膝詰めの対話を重ねる中、突如生じた東日本大震災に伴う原子力行政への社会的不信という“逆風”を乗り越え、ようやく重水素実験が開始できたこと、そして地域住民・自治体と取り交わした「法令基準より厳しい」放射線安全管理基準を誠実に順守し、6年間にわたる重水素実験を無事に完遂したという話には参加者一同の感銘を誘いました。放射線安全管理と地域社会との信頼関係に基づく共存性という当研究所ならではの特色のある講演でありました。
各大学等からの発表では、受動喫煙対策、外国人留学生への対応、企業との共同研究にまつわる試行錯誤といった目新しい発表が続き、大学等と社会との関わりといった安全衛生管理の新たな切り口や視点性の高まりが垣間みられました。
改正健康増進法(2024年4月施行)に伴う受動喫煙対策として、20歳未満の学生も所属する大学等においては第1種施設(学校、病院、児童福祉施設など)として「敷地内禁煙」対応を採る例が多いのですが、喫煙者には切実な問題です。構内での「隠れ喫煙」対応の紹介では、喫煙者個人との直接交渉だけでは不毛な平行線を辿り、喫煙場所の廃止や撤去といった環境的対応、トップからの禁止指示といった組織的対応、そして前提の法令に基づく社会的対応の4対応が合致してはじめて「隠れ喫煙」が撲滅できたとの発表者の論考が示されました。個人、環境、組織、社会の相互にリンクしあう4区分視座という一論考ですが、これは安全衛生管理分野における一般化や理論化の試みとして、学術機関らしい安全衛生の取り組みを感じさせるものでした。
外国人留学生への対応に関する話題では、大学が施設管理責任を負うところの学生寮での騒ぎや騒音、ごみの分別、火の不始末からの火災事例等といった昨今よく見聞きするようになった社会問題の縮図的な事例が紹介され、外国人留学生に国内の安全衛生規則をいかに順守してもらうか個人のモラルの問題に留めるだけでなく、言語や文化的背景の違いを考慮しつつ、臆することのない率直な対話の姿勢が大切と語られました。安全衛生管理の国際化展開の視点に新鮮味を覚えました。
民間企業との共同研究にかかわる事例では、例えば半導体製造において不可欠ではあるものの取り扱い上の困難さから忌避されがちな極めて反応性の高い化学物質の合成・製造の「安全性と効率性の両立」という社会要請に沿った課題が、共同研究という形で大学に委託され、不幸にも実験室の火災事故に至った事例が紹介されました。日頃の安全衛生活動は、単にリスクの排除をめざしての「規制」だけではなく、先端的な研究においては時にリスクに挑まねばならないことがあるからこその「備え」でもありたいものです。本火災事故例の社会的背景にも及ぶ発表者の考察からは、当研究所設備の今後の「官民共用化」に向けた安全衛生活動上の示唆を得るものでした。
また、本会合に併せて研究所の大型ヘリカル装置(LHD)を含む実験施設の見学会が催されました。LHD上部に上がっての説明では、参加者からは装置の大きさに感嘆の声があがったほか、見学経路上の消火設備、防災救護器具、安全標識、高圧ガスボンベ、高電圧機器の安全フェンス等に向けられた安全衛生担当者ならではの鋭い視線に、毎度ながら同行した研究所の安全衛生スタッフが改めて気を引き締める場面もありました。
長壁センター長は、閉会の挨拶で「今後も皆さんの貴重な経験を共有する場を提供していきたい。」と述べ、次回の開催を約して本会合を締めくくりました。
末尾ですが本会合の開催にご協力いただきました皆様に感謝いたします。



